怖い"集団催眠"専業主婦年金3号はお得でズルイ Q&Aで考える「公的年金保険の過去と未来」(中)
私が座長をやっている東京都のくらし方会議で、女性の就業パターン別の生涯収入を試算してくれている。①継続就労型を選択すれば、女性がおよそ平均寿命まで生きた④出産退職型よりも、退職金を除いても生涯の世帯収入で約2億円、うち年金で約3000万円多くなる。終身給付が保障されている公的年金は長生きリスクへの保険であるため、もし長生きすれば、年金での差はさらに大きくなる。
東京くらし方会議は、妻が継続就業しない場合の配偶者手当、配偶者控除による夫の収入のメリットは、32年間で最大670万円程度との試算も行っている。
老後生活の安定のために重要な政策は、継続就労を選択することができる環境整備を一層進めることだ。いわゆる「年収の壁」の話は、就業パターン③パート再就職型、④出産退職型に限定し、収入について時間軸を無視して、生涯ではなく短期の「年収」に限るからおかしな話になるのである。
2023年10月に開かれた第14回全世代型社会保障構築会議でも私は次のように話してきている。
配偶者が3号を続けるのは大きなリスク
知り合いのフィナンシャルプランナーからは、「奥さんに3号でいてと言うカマキリ君が、住宅ローンを組んだら、さらに恐ろしいことに。30年近く家のために1人で働き続ける。子供がいて離婚するとローンは払うけど、お家は出ていく羽目になります」との連絡などもある。今の時代、配偶者が3号でいることで家族全体で抱えることになるリスクの大きさは、少し考えればわかる話だ。
確かに3号がある年金制度は、昔の家族を想定した側面があったということはできる。だがそれは、「片働きだ」「共働きだ」という世帯類型の話ではなく、古い昔の家族として、結婚の安定性を前提としたという意味でだ。
3号ができた1985年の総離婚件数/総婚姻件数は0.23だったが、2022年は0.35だ。離婚に占める同居期間20年以上の割合も1985年12%から2020年20%に高まっている。さらには、いつなんどき配偶者がうつ病などになって一家の大黒柱の役割を果たせなくなるかもしれない。
結婚関係が安定していた古い家族の時代には遺族年金という死別リスクに対応する制度を準備しておけばよかった。だが、新しい家族は死別リスク以外のさまざまなリスクを抱えている。そうした時代には、3号の利用は、将来、貧困に陥るリスクが高すぎる。
配偶者が3号である人は、なるべく離婚を言い出されないように家事の手伝いをし始めたりと優しくなったりするのが老後に貧困に陥るのを防ぐ合理的な策となる。そして、日本の年金制度は、共働きで2人とも2号なら(年金給付水準などの面で)かなりいいところまできており、マクロ経済スライドによる年金給付調整で貧困リスクが深刻になっていくのは、おかしな表現になるが一方が3号にとどまろうとする片働き世帯であることも知っておくことは必要だろう。
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