復活『おっさんずラブ』長く愛される3つの理由 社会現象になった"初代おっさんずラブ"の続編

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吉田鋼太郎がテレビドラマでブレークしたのは50代になってから。NHKの連続テレビ小説『花子とアン』(2014年放送)への出演などがきっかけだった。かなりの遅咲きである。だが舞台でのキャリアは長く、特にシェイクスピア劇などの名優として知る人ぞ知る存在でもあった。

だから、吉田の演技には舞台で鍛え上げたスケール感がある。身ぶりにしてもセリフ回しにしても大きく、迫力満点。仕事では頼りになるやり手だが、実は春田に思いを募らせ続ける乙女チックな上司という振り幅の大きい役柄も、そうした吉田鋼太郎の演技の質にフィットしていた。同時にそこからにじみ出るなんとも言えないおかしさがあり、その点でも貢献度は高い。

そんな持ち味の異なる実力派俳優3人にとって、三角関係というのは心置きなく演技力を発揮できる格好の設定だ。実際、密度の濃い化学反応も生まれ、『おっさんずラブ』は3人の演技合戦を堪能できる稀有な作品になった。

共演する内田理央、眞島秀和、大塚寧々、伊藤修子、金子大地、児島一哉らも皆、ハマっている。このシーズン3の初回も、全員がノッている様子が伝わってきた。

教えてくれる人間の本質的な可愛らしさ

そして最後に、このドラマは人間が持つ本質的な可愛らしさを教えてくれる。

春田も牧も黒澤も、皆個性はバラバラだがとにかく可愛らしい。誰しも長所もあれば、短所もある。むろん3人とも完璧な人間ではない。時には気持ちを抑えきれなくなって暴走したり、言ってはいけないことを言って相手を傷つけたりもする。だがそれもひたむきな気持ちから来るもので、だからこそ愛おしい。

そんな可愛らしさは、年齢や性別に関係なく誰もが持っているものだろう。『おっさんずラブ』では、大人の男性同士の恋愛というシチュエーションだからこそ、その人間本来の可愛らしさが一段と浮き彫りになる仕掛けになっている。

それは、国や文化の違いを越えて響くものに違いない。『おっさんずラブ』が海外で大きな反響を巻き起こしたことも、そう考えれば納得できる。だから、単に楽しめるだけでなく繰り返し見ても飽きることがない。『おっさんずラブ』がここまで息の長い人気を保っている最大の理由も、実はその辺にあるのかもしれない。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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