全ビジネスパーソンがプレゼンを磨くべき理由 科学的に明らかにされているコミュ力の価値
ここに、驚くべきデータがある。イリノイ大のマクロスキー教授の推計によれば、2005年のアメリカで行われた労働の約19%が説明・説得行為であり、国民所得の少なくとも25%が説得行為から発生したものであるとされる。マネジャーともなればその業務の75%までが他者を説得することであり、アメリカの全雇用1億4200万人のうち、2300万人以上が、業務の75%以上を人に説明・説得する仕事をしていると推計されている(1)。
私たちの産業社会は、相手への伝達・説得で成立しているのであり、それに長じるものがトップ営業マンとなり、慕われる職場のリーダーとなり、マネジャーとなり、弁護士となり、インフルエンサーとなり、政治家となる。説得の技能に長けたものが、この社会で様々に活躍をする機会を得ているのである。
2000年前から、コミュニケーション技術は最重要教養である
哲学者アリストテレスの名は広く知られていると思う。だが、氏が後世に残した主著のひとつが「弁論術」であることは、あまり知られていない。諸学の父と呼ばれ、人類史上最高の頭脳の一人と呼ばれる氏が、もっとも重視した基本素養(教養)のひとつが、弁論術なのである。
その理由は明快である。自分がものごとを知ることと、他人がものごとを知ることは等価である。さらには、正しく伝えられないことは、内容そのものが正しくないことと等しく問題だからである。だとすれば、自らが学んだことを万人に正しく伝えられることは、自らが学ぶこと自体と同じかそれ以上に、価値があることとなる。だからこそ、社会のリーダーたるべき人は、よく学び、そして、よくそれを伝えることが求められる。これが、アリストテレスも所属した当時の大学「アカデメイア」の基本姿勢なのである(2)。
アカデメイア―アリストテレスの時代以降も、説得の技術は最重要の教養という地位を譲ることはない。中世には大学における自由七科(リベラル・アーツ)、すなわち基礎的な学芸7つの1つに修辞学が位置づけられている。
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