全ビジネスパーソンがプレゼンを磨くべき理由 科学的に明らかにされているコミュ力の価値

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現代産業社会においては、経営学の父・ドラッカーにより、他者に正しく伝え、その心を動かす、コミュニケーションの技能こそが、企業のリーダーが修めるべき技能のひとつであると位置づけられている(3)。人類史上、コミュニケーションの力が軽視されていた時代などないのだ。

コミュニケーション力とは「喋りの上手さ」ではない

プレゼンが上手いとは、科学的にはどういう現象なのか。最後に、理論の側面から、プレゼンを考えていこう。そこからは、プレゼンは単に喋りが上手いという以上の、はるかに大きな意味を持つことだということが見えてくる。

よいプレゼンとは、どういうものか。それは、分かりやすく構成が組み立てられており、エビデンスが提示されており、理屈も納得的で、資料は見やすく、場の空気も上手に作って、何より内容が充実していて、そして話もたくみであること。それはまさに、ビジネスパーソンとしての総合力である。

舞台袖からパッと出てきて、数分間の漫才をしてみせるお笑い芸人さんを見て、私たちが感じる「話が上手い」にしても、同じこと。その場での喋りも凄いけれども、練り込まれた構成、吟味された内容、自分たちをどう見せるかまで徹底的に分析し、数百回では済まないリハーサルと本番がなせる総合力で、私たちを魅了しているのである。

そろそろ「コミュニケーション能力」の学術定義をいいかげん開示しよう。コミュニケーション能力とは「ある特定の文脈において、メッセージの伝達や解釈、意味の交渉ができる能力」を意味する(4)。

コミュニケーション研究における日本の重鎮・大坊郁夫たちは、このコミュニケーション能力について既存研究の整理・統合を行い、ENDCORE(エンドコア)モデルを提唱している(5)。ENDCOREとはすなわち、Encode:自己を表現する能力、Decode:他者の発言を受け止める能力、Control:自己を統制する能力、Regulate:他者との関係を調整する能力の4要素のこと。「上手な喋り」の背後では、これらの力がフル動員されているのである。

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