「スマホで操作できるEV」中国で激化する勢力争い 有力メーカー3社が独自OSをEVに搭載し話題に

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SU7はシャオミにとって3年近い年月と巨額の開発費を投じた最初の製品になる。

雷氏が発表会で何度も引き合いに出したのは、テスラのモデルSとポルシェのタイカン(ターボS)だ。航続距離やモーター最高回転数、最高時速、時速100キロへの加速スピードがいずれも両車種を上回ると説明し、性能を誇示した。

だが、シャオミのEV参入は当初から「今から開発を始めても、販売を始めるころには市場環境はいっそう厳しくなっている」と疑問視されていた。業界の懸念は現実となっている。

中国自動車工業協会が1月11日に発表した2023年の新車販売台数は前年比12%増加し、3009万4000台に達した。2桁増は2016年以来7年ぶりとなる。

メーカー別の戦績を見ても、同62%増の302万台のBYDを筆頭に多くのEVメーカーが販売を伸ばした。だが、実際には各社は販売を増やすために値下げに走っており、採算悪化を嫌って中国EV勢の株価は低迷が続く。

2023年10月にはIT大手バイドゥ(百度)が出資する威馬汽車技術(WMモーター・テクノロジー)が破産申請に追い込まれた。2024年は日本や欧州の自動車メーカーの中国市場へのEV投入が本格化し、弱肉強食がより鮮明になると予測されている。

シャオミに勝算はあるのか。スマホを展開する同社は若年層に強力なファン基盤を持ち、それなりに善戦するとの分析はあるが、テスラのモデル3、モデルYも年明け早々に値下げしており、SU7がベンチマークにしたモデルSとタイカンのターボSと同水準の1000万~2000万円台に設定するのは現実的でないだろう。

SU7の価格はまだ公開されていないが、スマホと同じようにお得感を打ち出す価格になるのではとの声が多い。

自動車業界のアンドロイド陣営

シャオミは2023年10月に自社のスマホ向けOSを刷新した「HyperOS」をリリースし、SU7にも搭載した。

EVの市場拡大と競争激化で、差別化のカギになるのが自動運転機能などソフトウェアだと言われる。

自動運転が進むとドライバーは運転以外にさまざまなことができるようになる。EVが「走るスマートフォン」に向かう過程で、自動車メーカーとスマホメーカーの距離もぐっと近づいている。

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