セブン&アイ「海外M&A」に再びアクセル踏む事情 財務健全化進み投資再開だが今後に課題も

拡大
縮小

全体で見れば、直営店とFC店のどちらの収益性が高いかは一概には言えない。ただ、FC化を志向しているセブン&アイの場合、FC化が進んでいないということは、店舗の収益が思うように高まっていないことを意味する。今後、M&Aを推進する際には、FC化がスムーズにいくかどうかが1つの指標となる。

セブン&アイの成長戦略の柱は海外

別の問題もある。アメリカ政府は大企業によるM&Aを規制する姿勢を強めている。実際、2018年のスノコの店舗や2021年のスピードウェイを買収する際には、一部店舗の売却を命じたり、取得に際して事前に連邦取引委員会(FTC)の承認を求めたりした。2023年末には事前申告が求められていた店舗を無断で取得(その後、売却)したとして、FTCがセブン&アイとSEIを連邦地方裁判所に提訴、最大約113億円の罰金支払いを求めている。今回の追加取得も何かしらの条件が課される可能性もある。

そうはいっても、国内の成長余地が限られる中、セブン&アイの成長戦略の柱が海外であることに変わりはない。統合作業の難しさや規制のある中でも、海外M&Aの加速による成長を続けられるかが、今後の焦点となる。

冨永 望 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT