JT苦節5年「王者アイコス」へ繰り出す下克上戦略 加熱式たばこの最新モデルを28市場へ怒濤展開

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開発に携わってきた商品企画部RRP担当部長の山口顕氏は「完全に競合に勝っている。プルームXまでは追いつくことが目標だったが、アドバンスドはどうリードするかという考え方にフェーズが変わっている」と語る。国内でアドバンスドを発売後、わずか2週間で0.3%市場シェアを伸ばした(JT推計)。

日本市場ではアイコスを、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BAT)の「グロー」とプルームXが追う構図。JTのシェアは10%強で、アドバンスド投入でシェアを伸ばせるかはグローバル戦略でも重要になる。スイスやポーランド、英国に続き、他の市場でも順次アドバンスドへ切り替えていく方針だ。

2035年に大幅刷新の予定

JTが加熱式に本腰を入れ、グローバル展開を決めたのは2019年。今後10年間で、加熱式が最も伸びるカテゴリーと予測しての決断だった。それまでは電子たばこ、嗅ぎたばこなど、複数製品に投資する方針だった。以前のモデルのプルームSでは国内と海外で別モデルを投入するなど「右往左往していた」(嶋吉副社長)と当時を振り返る。

そこから社内のコンセンサスが徐々に固まっていった。開発部隊を統合し、2021年にプルームXを投入。コロナ禍や半導体不足で当初の計画から遅れたが、2023年にグローバル展開にこぎつけた。アドバンスドの投入でさらにアクセルを踏み込む。

デバイスも次世代モデルを準備中で、細かな刷新は1~2年ごと、大幅な変更は2~3年を目安に行っていく。2050年まで開発パイプラインがあり、2035年には大幅な刷新を予定しているという。「今後、ゲームがどんどん変わっていくことを期待している」(山口氏)。現在の加熱式のカテゴリーが、異なるジャンルの製品にシフトすることも想定しているようだ。

当然、ライバルたちもモデル刷新やマーケット拡大を進め、今後も加熱式のグローバル規模の競争は続く。後発のJTは着実に世界シェアを奪取できるのか、2024年は下克上に向けた重要局面と言えそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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