魚が獲れないのを海水温のせいにする人の盲点 「サンマが豊漁に戻った」と思う人が知らない真実

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サンマだけでなく、同じく近年大不漁が続いているスルメイカやサケなどでも、少し獲れただけでも「石川沖でイカ大漁」「大漁!オホーツクの秋鮭」と報道されると、全国、もしくは過去と比べて漁獲量が激減したままなのに、まるで資源が回復したように錯覚させられてしまいます。

それぞれの魚種の資源状態に関し、本当の全体像がわかる報道が不可欠です。

環境に責任転嫁している状況ではない

タイの市場にならぶ大西洋サバ(写真:筆者提供)

世界全体の水産物需要は増加を続けています。この写真は、タイの市場でのものです。地元の鮮魚とともに、解凍された大西洋サバ(ノルウェーサバ)が売られています。

ノルウェーサバの事業は、もともと日本の会社がノルウェーなどから買い付けた冷凍サバを、中国やタイなどに輸出して加工し日本に再輸出するビジネスモデルでした。

それが今では、アジア諸国の消費が増えだし、日本の市場と買い付けで競合するようになってきています。そしてこの傾向は確実に強まります。

また次の写真の右と左の端に見えるのは、輸入されたアトランティックサーモンです。東南アジアなどでは、日本同様に必ずしも科学的根拠に基づく資源管理が進んでいるとはいえません。それらの国々では、漁船数の増加や漁業機器の発達で漁獲量が増えていても、必ず漁獲量がピークを迎えた後に、減少を始めます。

インドネシアの売り場(写真:筆者提供)

そして、各国は自国で魚が獲れなくなった分を輸入で補おうとします。さらに人口増加や経済の発展で買い付け力が強化されてますます日本にとって輸入は難しくなります。

我が国が行うべきことは、魚が減っていく理由を海水温上昇のせいばかりにせず、すでに水産業を成長産業化させている国々を見習うことです。そして数量管理を主体とした科学的根拠に基づく水産資源管理を促進することではないでしょうか。

片野 歩 Fisk Japan CEO

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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