木軸ペンは、クラフトマンシップが光る逸材ぞろい。デリケートな木の性質を知り尽くした職人が選定し、木と対話するようにして削り出し、木の魅力を存分に引き出した一本を、手にしたときの心躍る感覚。木軸ペンに込められたこだわりの凝縮は、僕にとって、ペンという道具以上の価値を持つものになっている。
どうして僕は、木軸ペンにここまでの愛があるのか?
一番の理由は、「使うのが楽しい」から。
木軸ペンは、種類によってばらつきはあるものの、どのペンも経年変化する。それが木軸ペンの最も大きな魅力で、長く使いたくなる理由。ほかのジャンルの筆記具では味わえない醍醐味だ。僕は、これを野原工芸の「欅のシャープペンシル」で知った。
購入当初、ケヤキのボディは黄色っぽく明るい色みだったが、1カ月ほど使うと色が沈んでいった。劇的な経年変化。8年後の今は、黄色っぽく明るかったころの面影はまったくなく、深みのあるダークブラウンに。同じペンには到底見えないくらいの変化だ。
変化の速度に振り幅はあっても、木は生き物。木軸は、変化するから面白い。「使うのが楽しい」の真意は、変化が楽しいということ。「使うと変化して楽しい」から「ペンを使いたくなる」気持ちが高まる。
経年変化は、「使い込んだ証し」と捉えているから、使えば使うほど「もっと使い込んだ感を出したい」との思いが強まる。ペンを持ち続けたくて、勉強に励んだようなものだ。
高校生のときに、勉強が楽しいと思うきっかけをくれた、成績を上げる楽しみも教えてくれたのが、木軸ペン。
「眺める」楽しみと長く使い続けられる良さ
それからもう一つ、木軸ペンには「眺める」という楽しみもある。
特に、木の模様である“ 杢(もく)”は、自然が作り出すもので、縮杢(ちぢみもく)、瘤杢(こぶもく)、孔雀杢(くじゃくもく)など種類はさまざま。
その造形は美しく芸術的で、吸い込まれるように眺めてしまう。そして、一つとして同じものはない。
樹種や生育環境、病気の痕跡などの影響で作り出される杢に生命を感じ、愛おしくなる。
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