だから日本の中古住宅は一向に活性化しない 空き家問題の遠因にも?「物件囲い込み」の愚

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この仲介保証のミソは、売り主だけでなく買い主も仲介会社の顧客でないと保証を行わないという点だ。つまり「両手仲介」の時だけ保証して、同業他社が客付けした買い主からの補償請求は対象外。売買瑕疵保険であればもちろん買い主が誰であっても保証されるが、仲介保証は民間企業の独自サービスなので問題はないようだ。

もし、売り主が仲介保証のサービス対象となる買い主に物件を売却してほしいと依頼した場合、レインズに物件情報を登録する義務がない一般媒介契約を結ぶことになる。

これまで多くの物件を両手仲介で契約成立させてきた大手仲介会社を信用して一般媒介契約で物件を預ける売り主が今後も増えれば、いくらレインズのステータス管理を導入しても、中小業者や新規参入業者が期待するような中古市場活性化の効果は得られないかもしれない。むしろ大手への物件集中が加速して寡占化が進む懸念がある。

「中小の仲介会社からは、大手に対抗できる使い勝手の良い保険商品を開発してほしいと要望されており、保険法人に開発を要請したところだ」

国交省の検討委員会で大きな議論に

今年3月に国交省住宅局で1年をかけて報告書をとりまとめた「住宅瑕疵担保履行制度のあり方に関する検討委員会」では、大手が提供する仲介保証サービスが大きな議論となった。

全国に5万2000以上の加盟・利用不動産店を抱える不動産情報ネットワーク大手のアットホームでも、保険法人の住宅あんしん保証と提携して検査・保険料セットで6万円から(戸建ての場合)という特別割引価格で売買瑕疵保険の提供を3月から開始した。何とか大手への物件集中を食い止めようという作戦だ。「全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)などの業界団体で大手に対抗する同様のサービスを開発してはどうか」との声も聞くが、国交省が推進する瑕疵保険制度に影響する懸念もあるだけに悩ましいところだろう。

そもそも物件囲い込みが発生する原因は、両手仲介にある。09年に前の民主党政権が「両手仲介の原則禁止」を打ち出した時には業界を挙げて潰しておきながら、今になって物件囲い込み防止を求めたわけだが、果たして期待される効果は得られるのか。中古市場を活性化して消費者がメリットを受けられる環境を整えるためには、まだまだ突破すべき壁は残っている。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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