定番のオレンジジュースで「休売」が相次ぐ理由 果汁不足と円安直撃、再開メド立たない商品も

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ブラジルの産地では、2023年の初めに洪水が発生し、病害もまん延した。またアメリカの産地でも、大型ハリケーンの発生で生産が激減。オレンジ果汁は世界中で争奪戦となり、取引価格が高騰している。

そこに円安が追い打ちをかけた。2023年1月から9月のオレンジ果汁平均輸入単価は1リットル当たり462円と、前年同期比で49%上昇した。過去5年の平均輸入単価292円と比べると、5割以上も上回っている。

世界の人口増や新興国の経済発展などによりオレンジ果汁需要は拡大する一方、供給は追いついておらず、円安の影響で日本が買い負けている状況もある。

そんな中でも2023年の年間のオレンジ果汁輸入量は、5万キロリットル弱と前年より増える見込み。ただ、2021年と2022年の輸入量が極めて少なかったこともあり、一般社団法人日本果汁協会は「オレンジ果汁不足を補える十分な輸入量とはいえない」(「果汁協会報」)と説明する。そのため、2023年についに飲料各社の在庫が底をつき始め、販売休止が続出したとみられる。

オレンジジュースだけ値上げするメーカーも

こうした状況に物流費などの高騰も加わり、オレンジジュースの値上げが相次いでいる。

キリンビバレッジは、前述の「トロピカーナ 100%」(900ミリリットル)を2023年8月に販売再開すると同時に、90円値上げして、希望小売価格を税別350円とした。他方、同一シリーズのアップルやグレープなど別フレーバーの品は同260円のまま。現状、オレンジジュースの値段が突出して高い。同年10月には「トロピカーナ 100% オレンジ」の330ミリリットルペットボトルも値上げした。

雪印メグミルクは、「ドール」ブランド商品を2022年から複数回値上げしてきた。一連の値上げ前は税別95円だった200ミリリットル商品は、現在同115円となっている。

ただ、オレンジだけ高い値段にはしていない。200ミリリットル商品はフレーバーが10種類あり、その中から「選ぶ楽しみ」を感じてもらいたいという想いが根底にある。一方、比較的原価が高い450、1000ミリリットルに関しては、オレンジジュース商品を休売中であり、今後「200ミリリットル商品とは異なる検討もあり得る」(同社の平谷氏)という。

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