生成AIが広げる「少数の一流」と「それ以外」の格差 「2:8の法則」の「8」にあたる仕事が減る

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このような仕事消滅の危機に関して、日本人はあまり真剣に捉えていないのかもしれません。2023年、ハリウッドでは生成AI規制を求めて長期間にわたる大規模なストライキが起きました。なかでも俳優と脚本家の抱える問題は深刻です。

たとえば、生成AIが学習するための演技素材としての仕事が、非常に安い賃金で募集されています。俳優がカメラの前で求められた演技をすると、それが生成AIの学習データになるのです。表情、身振り手振り、アクションといった一度きりの演技が、その後何度でも使える生成AI用の学習情報として蓄積されるのですが、その賃金が映画の出演料よりも安くなっているのです。

また、脚本家の状況も深刻です。映画には過去100年の歴史があり、脚本家は過去の名作を学習することでよりよい脚本を生み出そうと努力しています。

AIに仕事を奪われそうになったら?

ところが生成AIは、人間の脚本家よりもその学習スピードがはるかに速いわけです。まったく新しいコンセプトのストーリーではない映画やテレビドラマの脚本を考えるのであれば、生成AIは人間の脚本家の強大な敵になります。

たとえば、生成AIにこのような指示をするとします。

「映画『タイタニック』をウクライナ紛争に置き換えて脚本を生成しなさい。キーワードは“結ばれない相手との情熱的な恋”で、“突然起きた命の危機”に巻き込まれながらも、最後には“悲劇的なクライマックス”が待っている、そんな脚本にしてほしい」

というように、何度かチャットを繰り返しながらコンセプトを入力していくと、新奇性には欠けるものの、ある程度売れそうな映画脚本の骨格が数時間で作れるでしょう。

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