日産の中国戦略、カギ握る「若者向けセダン」 ディーラーとの関係を修復できるか

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積極的に投資を続けてきた日系メーカーにも、ここに来て慎重さが見られる。ある日系プレス機械メーカーによれば、取引先の生産能力増強に伴い、受注設備を2015年度に納入する予定だった。だが今年初め、「販売の停滞を理由に、先方から納入を1年程度延長してほしいとの申し入れがあった」(プレス機械メーカー首脳)のだという。

高い伸びが見込めなくなってきた中、各社間のシェア争いも激化。上海GMは5月、主力11車種の価格を最大で5万元(約100万円)引き下げると発表し、ライバルたちを驚かせた。この動きはほかの外資系や現地メーカーにも広がっている。ホンダでも、主力のセダンにおいて「競争が激しく、応戦せざるをえない」(水野泰秀・広汽本田汽車有限公司総経理)と、5%程度の値引きは許容している。

初の中国専用モデルを投入

初めて中国の若者向けに開発された新型セダン「ラニア」

一方、ゴーン社長は、「現在、130万台の乗用車の生産能力は、今後2~3年でフルになる」と、さらなる販売拡大に自信を見せる。2014年度の乗用車の販売実績は98万台。3年で30万台増やすには、年率10%の販売増が必要なだけに、楽な数字ではない。

東風汽車の関総裁が4月下旬の段階で、「やるべきことでできたのは6割」と述べているように、ディーラーと一体となった改善の取り組みは道半ばだ。魅力的な新車の投入や、競争力のある価格設定など、トータルの戦略が重要になってくる。

カギを握るのが、今秋に投入する新型セダン「ラニア」だ。中国の若者向けに開発された初のモデルで、開発初期の段階から若手の中国人デザイナーがかかわった。この車で消費を牽引する20代、30代の取り込みを狙う。ディーラーとの冷えた関係を修復し、攻めに出る今年は、まさに正念場となりそうだ。

「週刊東洋経済」2015年6月13日号<8日発売>「核心リポート02」を転載)

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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