日本の大企業が「辞めた人」活用し始めた納得理由 ネットワークを作ることで得られるメリットとは?
「離職」「休職」「休暇」といったそれぞれ違う角度ではありますが、「離れる」という効能を取り込もうとしている企業があることは確かです。
ある種、離れることにポジティブに向き合っている企業ほど、会社としての求心力が高く、離職が少なかったり、離職しても縁でつながっていたりするそうです。
これまでは終身雇用など「囲い込み型」で、同質的な社員を集めて同じ方向に動かすという経営が多かったですが、変化の激しい時代にもはや通用しなくなっています。
社員1人ひとりの能力を最大限に発揮してもらう、会社と個人が選び、選ばれるというお互いに依存し合わない関係を築けるかどうかが、競争力を分ける時代になってきたと井上さんは指摘しています。
戦前の日本ではもっとポジティブだった「転職」
キャリアブレイクの論文を出されている法政大学大学院政策創造研究科の石山恒貴教授にもお話を伺いました。
石山先生は、個人が会社の外で学びを得る「越境学習」、個人が主体的に仕事をつくっていくプロセスである「ジョブクラフティング」、企業がどう社員を活かすかの「タレントマネジメント」などを主軸に研究活動をされています。
「そもそも戦前の日本は、転職が多かった」と語る石山先生は、長期雇用が中心の日本的雇用システムは、和を尊ぶという日本の文化や国民性が原因ではないと言います。
「大正時代は、渡り職工などと呼ばれる労働者が存在して、会社を渡り歩いて技術を磨いていくことが前向きに捉えられていました。その時代の流動性は大変高く、長期雇用は一般的ではありませんでした」と、長期雇用や年功序列などのいわゆる日本的雇用システムの成立は、戦後以降で比較的新しいものだということを教えてくれました。
「経営者によっては、社員が離職することを否定的に捉えず、それを個人と組織の新しい関係性だと捉えている企業もある」と石山先生は続けます。
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