ドクターイエロー引退?新幹線「N700S」の後継車 自動運転や検測機能搭載の「新型」2028年登場?

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そう考えるとN700Sの後継車両は2026~2028年に登場する可能性が高い。「自動運転システムが搭載されるのは新型車両か」と尋ねると、辻村本部長は「N700Sの改良版か、新しい名前がつくかはわからない」としたうえで、「自動運転のほかにもいろいろな改良が施されるのではないか」と述べた。その車両に新機能が複数搭載されるなら、700系からN700系、さらにN700Sが生まれたように、新型車両として新しい名前がつけられる公算は大きい。

辻村本部長は複数の改良が施される可能性を示唆した。ではほかにどんな性能が加わるか。N700Sは営業走行をしながら架線や信号システム、軌道などを監視できる機能を持ち、毎日の営業運行と同時に検測を行うことができる。武田健太郎副社長は「営業列車に積む設備がどんなデータをどこまで取れるか研究中」とし、新型車両において状態監視機能を拡充する可能性は十分ありうる。

2023年12月12日には、高速走行中に架線の位置関係を三次元的に計測する装置や架線の金具を撮影し、AIを用いて金具の変形や破損などの異常を自動で検出する装置を開発したと発表した。今後、営業列車の搭載に向け耐久性などの検証やさらなる精度向上を行い、東海道新幹線の列車と指令の間で高速・大容量の通信が可能となる2027年以降の活用を見込むという。これも「新型車両」の登場時期と合致する。

ドクターイエローは引退か

営業列車が高速走行しながら線路や架線の状態を監視できるようになると、気になるのはドクターイエローとの兼ね合いである。

ドクターイエロー
2001年に登場した現在のドクターイエロー(記者撮影)
ドクターイエロー車内
ドクターイエローの車内(記者撮影)

JR東海が保有するドクターイエローは2001年の運行から22年経つ。いつ後継車両が登場してもよいが、営業列車で同じ業務ができればその必要はない。つまり、東海道新幹線の営業列車における状態監視機能が拡充され、ドクターイエローと同等の機能を持つようになれば、ドクターイエローの存続に関わってくる。

「ドクターイエローが今後どうなるかは多くの人が関心を持っており、JR東海の社内でもトップシークレット扱い」(JR東海の関係者)として、その帰趨についてはまったく情報が入ってこない。先述の新しい架線検査装置の開発についても、その効果として「作業員の徒歩巡回による外観検査の削減につながる」としており、ドクターイエローに関する言及はない。

しかし、すでに九州新幹線や西九州新幹線ではドクターイエローのような専用車両ではなく、営業用の列車に検測装置を組み込んで検査を行っている。状態監視機能を拡充した新型車両の登場に合わせてドクターイエローが引退するというシナリオは十分ありうる話だ。

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