大阪ー北九州「6800円」フェリー旅が超快適だった 最安5000円~「ベッド・浴室も完備」ホテル代浮かせ移動

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名門大洋フェリーの欠点はあるだろうか。強いていえば、wi-fiはあるものの、1回30分で3回まで。翌日も3回なので計3時間までとなる。とはいえ、陸地からそれほど遠くないところではwi-fiがなくてもネット接続が可能だった。

船旅というと揺れを心配する人もいるだろうが、1万5000トン超という大型船のうえ、穏やかな瀬戸内海を航行するということもあり、揺れらしい揺れはほとんど感じなかった。

航路と現在位置はスマホで常時確認できる(筆者撮影)

8時25分、予定よりも5分早着で新門司港に到着。ここから門司駅経由小倉駅まで無料送迎バスが2台出る。門司駅まで所要時間は20分ほど、9時過ぎに到着した。

のぞみなら新大阪駅から小倉駅までわずか2時間12分の距離に13時間以上かかった。しかし、宿泊費が浮いたうえ、睡眠スペースの快適さ、風呂やレストランから見える景色など、船旅の魅力が詰まっていた。

名門大洋フェリー以外でお得な船旅は?

名門大洋フェリーのような原則大幅割引はないものの、商船三井さんふらわあの大阪南港~別府港には2023年に日本初のLNGを燃料として運航する長距離フェリー「さんふらわあ くれない」「さんふわらあ むらさき」(1万7114トン・定員716名)が投入され、快適な船旅が期待できる。

近畿地方在住者にはある程度なじみ深い、瀬戸内海航路だが、寝ている間に関西と九州北部を移動できるメリットはそれ以外の地方に住む人にも少なくない。たとえば東京から新幹線で京都に行き、夜行フェリーで九州に移動、九州からLCCで成田に戻るといった旅も格安で実現可能となるだろう。

首都圏発着のフェリーで割引運賃に積極的なのは伊豆諸島へ就航している東海汽船だ。

2024年1月15日~3月31日帰着(東京金曜夜発は適用除外、そのほかにも除外日あり)まで、東京・竹芝客船ターミナルから大島~神津島までなら往復で6000円という破格の乗船券「スーパー島トクきっぷ」を販売している。往復2等和室限定なので、優雅というわけにはいかないが、東京・竹芝客船ターミナル~神津島の運賃は1月なら片道7740円なので割引率は実に61%におよぶ。

同社では、東京から大島・利島・新島・式根島・神津島のいずれかまで夜行日帰りで往復する「ミステリーきっぷ」(2023年12月限定)を4000円で発売し話題となったが、神津島が行き先となった場合、島での滞在時間がわずか30分しかないことを考慮すると、「スーパー島トクきっぷ」のほうがはるかに価値が高いといえそうだ。

伊豆諸島・小笠原諸島観光客入込実態調査によれば、伊豆諸島を訪れた観光客数は8月が突出して多く、10月から2月にかけては落ち込みが激しくなる傾向が読みとれる。

また、年次ごとの変化をみても2019年までは年間40万~50万人が訪れていたのが2020年と2021年はコロナ禍の影響で20万人強まで落ち込んだ。2022年には40万人ほどまで回復したが、まだコロナ前の水準までは達していない。前述した割引乗船券はこうした需要回復策として企画されたものだろう。

旅客船は、国内旅客輸送量(人キロベース)の分担率で0.5%を占めるにすぎない。しかし、海に囲まれた日本は長距離フェリーで旅をする機会がもっとあってもよいのではないだろうか。今後も新造船や魅力的な運賃によって、船旅がより身近になることを期待したい。

橋賀 秀紀 トラベルジャーナリスト

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はしが・ひでき / Hideki Hashiga

東京都出身の40代。早稲田大学卒業。「3日休めれば海外」というルールを定め、ほぼ月1回の頻度で海外旅行に出かける。訪問国は121カ国。著書に『エアライン戦争』(宝島社)など。『週刊東洋経済』で「サラリーマン弾丸紀行」を連載した。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。記事の内容についてのお問い合わせ・取材の依頼などについてはこちらまで。

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