任天堂創業家「終戦宣言」、東洋建設が冷静な理由 1年半にわたる「ファミコン戦争」が残した教訓
新体制がスタートし、YFOのTOB提案に反対を表明するまでの間、東洋建設の対応は終始落ち着いていた。
異例のハイブリッド体制での船出となったが、「新体制になったからといって、社内に混乱した様子はなかった。普段通り、仕事に取り組んでいた」と、株主総会直後に東洋建設のベテラン社員は語っていた。
YFO側の会長が「フェア」宣言
社員の動揺を抑制したのが、株主総会の直後に、オンラインなどで発した吉田会長の社員向けのメッセージだ。
「われわれはYFOの言いなりになるために、東洋建設に来たわけではない。会社の企業価値向上のために来た。フェアに執行していく」。「固有の株主の利益ではなく、すべての株主の利益になるように経営を推進していく」。
YFO側の会長が「フェア宣言」をしたことで、社員の間に安堵感が広がったという。
その後も、吉田会長は東洋建設の幹部に対して、洋上風力発電事業を含めた三菱商事でのビジネスの進め方を伝授するなど知見を注いだ。同じくYFO側の元フジタ・建設本部理事の登坂章常務も、建築事業本部副本部長として、取引先の開拓や建築分野でのプレゼンテーションの進め方といったアドバイスを送り続けた。
新しいTOB提案に対しても、新体制となった東洋建設は慌てることはなかった。
2022年5月に、YFOは東洋建設に対して最初のTOB提案を行った。だが、東洋建設の前経営陣はYFOに対して嫌悪感を隠さず、対立が激化。TOB提案をまともに議論した様子さえなかった。提案から1年後の2023年5月に、正式に反対を表明した。
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