任天堂創業家「終戦宣言」、東洋建設が冷静な理由 1年半にわたる「ファミコン戦争」が残した教訓
今回、YFOから東洋建設に「TOB提案を取り下げる」との連絡がきたのは、12月20日の15時頃。YFOが17時過ぎにプレスリリースを出すわずか2時間前、事務局宛にメールが送られてきた。メールには取締役会や特別委員会向けの書簡、そしてプレスリリースも添付されていた。
寝耳に水のような連絡だったが、東洋建設側は大騒ぎすることはなかった。「YFOが取り下げの決定を下すまでには、もっと時間がかかると思っていた。ただ、今回の通知を受けて社内にざわついた様子はなく、冷静に受け止めた」(東洋建設の幹部)。
TOB成立を急いでいたYFO
YFOは東洋建設へのTOB成立に、執念を燃やしていたことがわかるエピソードがある。
今年6月の株主総会で、YFOが提案した取締役9人のうち7人が選任された。東洋建設が提案した取締役は6人の選任にとどまり、YFO側の取締役が過半を占める「ハイブリッド」体制となった。
元三菱商事の常務でYFO側の吉田真也氏が会長に、東洋建設の本業である土木事業のたたき上げである大林東壽(はるひさ)氏が社長に就いた。
着任した吉田会長と大林社長は7月下旬、東京・六本木の雑居ビルに入居するYFOの事務所を挨拶のために訪れた。両者はこの際、応対したYFO幹部の言葉に耳を疑った。「TOBを受け入れるかどうか、すぐに検討してほしい」。
「この言葉に、2人とも面を食らったようだ。経営陣の体制を固めるには、しばらく時間がかかる。そのため『YFOもTOBの件は当面様子を見るだろうな』という認識だった」と、東洋建設の幹部は明かす。
その場で、「最初のやつ(2022年5月に受けたTOB提案)を再検討するのは難しい」と東洋建設側が伝えると、YFOは新しいTOB提案を出すことに合意。9月に提示した、TOB価格の引き上げなどを含めた修正提案が、それにあたる。
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