71歳で吉本芸人になった「おばあちゃん」の5年後 路上でチケットさばいていたら周りが大慌て
――そこではじめて、オーディションのライブだと知った(笑)。
それでもあまりピンときていなくて(笑)。よくわからないまま次のライブでも合格して、神保町で行われる入れ替え戦ライブに出られることになりました。
3回もライブに出られただけで満足していましたし、はなから受かるはずがないと思っていましたから、ライブが終わったらすぐ帰ろうと荷物をまとめていたんです。そしたら、合格者を貼りだした掲示板に人だかりができていて、「おばあちゃん、おめでとう!」って次々に声をかけられて。「私、何かしたの?」「この神保町のメンバーになったんだよ」「それ、どういうこと?」「おばあちゃんはいいよなぁ、能天気で」って(笑)。
――その後のご活躍はめざましく、さまざまな人気芸人とライブで共演したり、単独ライブも開催したり。
私自身は毎月新ネタを考えて、舞台で披露できるだけで本当に楽しいので、その一心で今も続けています。デビュー当時からお世話になっている作家さんも「おばあちゃん、とにかく気張らずに、楽しみながらやりなさいよ。変に(笑いを)狙わなくていいからね」と言ってくださいます。でも、そもそも何を狙ったらいいのかもいまだに理解できていなくて(笑)。
71歳で吉本の養成所へ
――今のような姿は、吉本総合芸能学院(NSC)に入学した当初は想像できていましたか?
とんでもない! 想像もしていませんし、そもそも吉本に受け入れてもらえるとすら思っていませんでしたから。
――その吉本、NSCに入ったきっかけは?
長年勤めていた会社を定年退職してから、高齢者劇団に所属していたんです。でも、まったくの素人で飛び込んだのでお芝居の基本がわからない。「板付き」と聞いて「カマボコじゃあるまいしどうやって板に付くんだろう?」とか、「はけろ、はけろ」と言われても「ほうきがないのにどうやって掃くの?」というレベルで(笑)。
それで、舞台の勉強をしたいと思っていろんなお芝居の学校に問い合わせたのですが、どこも「25歳まで」など年齢制限があって、すべて断られてしまいました。若い俳優さんを養成するのが目的だから当たり前ですよね。ところが唯一、「来ていいよ」と言ってくれたのがNSCだったんです。
――70歳を過ぎてNSCに入るのは異例中の異例。周りはびっくりしたのでは?
主人に「吉本に行きたい」と告げたときはびっくりされましたね。でも、「協力はできないけど邪魔はしないよ」と送り出してくれました。
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