ENEOS「社長セクハラ解任」も安易に非難できぬ訳 むしろ自浄作用が適切に機能した事例と言える

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ところで、冷静に論じるのであれば、大企業としてENEOSのコンプライアンスにかかわるガバナンスが利いた結果ともいえよう。

令和の今でも、未だにトップがこんなことをしている企業は、中小企業を含めれば、まだまだ残っているはずだ。もしあなた自身やあなたの家族が勤務する会社の飲み会で同様のことが起きた場合に、経営トップであってもきちんと処分されるのか……そう問われて、自信を持って「はい」とうなずける人はどの程度いるだろうか。

今回の行動そのものや、2代続けて経営トップが不祥事を起こしたことは決して褒められることではないが、簡単に批判できるものでもないのも、悲しいが現実ではないか。

監査役の仕事内容、役割とは?

ところで私が某大企業で勤務していたとき、「監査役」なる人の仕事内容を知らなかった。たまにエレベーターで会って会釈するくらいの接点しかない。冠のような仕事だと感じていた。

しかしとんでもない。監査役は現在では重要な役割を担っている。企業は内部通報制度を有する。そしてその内容は監査役がチェックする。そして重要な事象については対処する。

会社は株主のものである。株主は取締役を選ぶ。取締役会は代表取締役を選ぶ。株主は業績向上を通じて、企業価値(資産価値)を最大化してくれるか激しくチェックする。そして取締役会で経営の重要事項を決定し、それを執行役員以下が実務を遂行する。

株主はつねに企業内部を監視できるわけではない。ハラスメントなど、めちゃくちゃな行為が横行しているのは社会通念的にも許されない。そこで、監査役は経営陣を牽制しながら、健全な企業経営を実現させる。

もちろん、経営陣が女性に抱きついているので、同社を「褒める」という表現はおかしいかもしれない。ただ同社の対応を見ると、やるべきことをやっている。

・コンプライアンスホットラインに通報があると、すぐさま調査を開始(なお11月末でありスピード感がある)。監査等委員会ならびに外部弁護士と連携し、事実であると認定
・前述の通り、速やかに3氏の処分を決定。取締役会において勧告、実施
・クローバック・マルス条項を適用し、(元)代表取締役社長の月額報酬・賞与・株式報酬の一部返還・没収を行う。*なお、クローバック条項は「役員に重大なコンプライアンス違反等があった場合、支給後の役員報酬の全部または一部を返還させる条項」であり、マルス条項は「同様の場合、支給前の役員報酬の全部または一部を没収する条項」で、同社はガバナンスにおいて謳っている(https://www.hd.eneos.co.jp/esgdb/governance/system.html
・同社だけではなく、子会社においても同様の解任を実施
・弁護士費用を含む一切の費用は、同社に生じた損害であるため別途求償
・その他、前述の3氏以外も、コンプライアンス上の責任があるとして取締役メンバーが報酬を自主返上
・コンプライアンス強化に向けて施策の検討
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