東洋経済の「社長交代」発表が不評を買った理由 従業員には寝耳に水、クーデターと言われても仕方ない

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(編集部撮影)

「東洋経済新報社『突然の社長退任』はクーデターだった!」

週刊文春の電子版にそうした見出しの記事が出たのは11月1日のことだ。

この2日前にあたる10月30日、筆者が勤める東洋経済新報社で社長交代の発表があった。12月に予定する株主総会をもって現取締役執行役員の山田徹也氏が代表取締役社長に就任し、現代表取締役社長の田北浩章氏は取締役を退任し会長に就任するというものだった。

文春の記事は、この人事に対する社内の混乱ぶりを現役社員の声も交えて報じているが、東洋経済の公式見解は「クーデターではない」としている。

東洋経済の決算期は9月で、取締役の任期は1年。12月に予定する定時株主総会での取締役等選任議案の候補に田北氏は含めないことを取締役会で決めた。最終的に田北氏も取締役会で新体制の人事案を承認している。

デジタル大辞泉(小学館)でクーデターの意味を調べると「既存の支配勢力の一部が非合法的な武力行使によって政権を奪うこと」とある。当然、非合法ではなく、武力行使もない。そもそも政権ではなく、経営の問題だ。

今回の人事がクーデターかどうかを問うのは意味がない。あくまでも比喩でしかないからだ。ただ、経済記者として多くの他社事例を見てきた立場からすると、「クーデターと言われても仕方ない案件」である。

従業員にとっても「寝耳に水」だった

新年度がスタートした10月初めには、田北氏による方針説明会が社内で開かれた。取締役候補から田北氏が外れることが想定外だったことは本人も認めている。従業員のほとんどにとって、トップ交代は寝耳に水だった。

現社長の経営に問題がある場合、それを正すために行動することは取締役の義務である。社長解任に動いたとして何ら責められるべきものではない(今回は解任ではなく、株主総会の選任議案に入れないことを決めた)。体制の変更はガバナンスが一定程度働いたとも言える。

一方で、今回の議案では5人いる現取締役のうち、田北氏以外の4人は重任(候補)となった。現社長の経営が問題だと考えていたなら、今までそれを是正できなかった責任が4人にはある。

新体制に移行する理由として、社内では、意思決定の迅速化や世代交代、社長とのコミュニケーション不足などといった説明があった。田北氏を除く4人はこれまで取締役会などで何を主張し、どう行動してきたのかも明らかにすべきだろう。

少なくとも経済記者として他社で同じ状況を取材することになれば、筆者はそう追及する。

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