保険の営業マンにまんまと「カモられる」人の盲点 積立型は保険の本質・レバレッジがほぼ働かない
こう考えると、保険の原則は、「大変な目にあった人以外、全員掛け捨て」だということがわかるでしょう。大変な目にあう人は、そうではない人に比べて、圧倒的に少ない。少ないからこそ一極集中できる。だからこそ、いざというときにみんなから集めていたお金を潤沢に払うことができるのです。
つまり、保険の本質はレバレッジ(てこ)にあります。このことからも、保険は貯蓄のためではなく、貯蓄だけではなんともならない領域をカバーするものだということがわかるでしょう。
日本で積立型の保険が重宝されるようになった背景
──なるほど、保険の歴史や原則はよくわかりました。ここでちょっと話を戻したいのですが、どうして積立型保険はオススメではないのですか? 満期になればお金を返してくれる積立型は、大変な目にあった人だけでなく、全員に支払いがあるということですよね? リスクに備えつつお金も貯まるのはお得な気がします。
先ほどのケースで考えてみましょう。もし大変な目にあわなかった49人にも300万円を返そうとすると、保険料はいくらになるでしょう。返す時点で、総額1億4700万円(300万円×49人)が必要ですね。
さて、これを50人で負担しようとすると、1人当たり294万円、つまり毎月24万5000円ずつ積み立てなければならない計算になります。そんな大金、ほとんどの人は払えないはずです。それに、294万円払って300万円返してもらう……これ、「すべてを我慢して貯蓄に集中する」のとほとんど変わらないですよね。つまり、保険の本質であるレバレッジがほとんど働かない。これが積立型の特徴なのです。
では、なぜ日本では積立型の保険が重宝されるようになったのでしょう。それは、高度成長にともなう高金利が背景にあったからです。
資産運用の世界には「72のルール」というものがあります。これは「72÷金利=元本が倍になる年数」という法則で、かのアインシュタインも絶賛したというものです。
僕が日本生命で働いていた時代は、長期金利が8%を超えていました。「72÷8%=9年」ですから、9年で100万円が200万円になったのです。これが、積立型の保険がよく売れた根本の理由。保険の期間は20年と長いですから、金利が金利を生む複利効果が存分に発揮されたのです。
では、いまの日本の長期金利はどれくらいでしょう。0.4%として計算してみると、なんと「72÷0.4%=180年」! 倍になるのに180年かかります。つまり、ゼロ金利政策のもとでは複利効果が働かなくなるのです。
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