《日本激震!私の提言》世界のパラダイムの転換期、日本だけが旧態依然の懸念--孫崎亨・元防衛大学校教授
--菅首相は、5月下旬に日本で開かれた日中韓首脳会談のため来日した、中国の温家宝首相や韓国の李明博大統領を福島の避難所に同行させ、現地で試食をさせた。
もてなす側の姿勢として問題がある。相手は嫌とは言えない。首脳のもてなしを自分の政治的パフォーマンスや宣伝のために利用した首相はこれまでいなかった。
一方で、岡田克也幹事長は原発の警戒区域内を視察する際、自分だけが物々しい防護服を着ていた。それほど放射線を恐れているのに、「原発は維持する」という発言を続けていることにあきれる。
--震災対応に追われ、日本は内向きになりがちだが、菅政権の外交に死角はないか。
日中韓首脳会談では、中国側から日本に対して二つの重要な提案があった。一つは自由貿易の促進。もう一つはほとんど報道されなかったが、尖閣諸島周辺で起きた漁船衝突事件のようなことの再発を避けるために、海上の危機管理メカニズムを構築しようというものだ。経済を緊密化しながら、領土問題をめぐる緊張を和らげたいという提案だ。
中国側には尖閣諸島の事件の後、日本との関係を修復したいという思いが強い。大震災後の日本に手を差し伸べるという形なら、譲歩しても中国国内からの批判が出にくいとも考えたのだろう。ところが、これを受け止めるだけの力が今の日本政府にはない。外務省も提案の意味を積極的に説明しないし、メディアも取り上げない。二つ目の提案について報道したのは沖縄タイムズだけだ。
重視すべき中韓との関係 米国べったりは日本だけ
自由貿易協定についても、日本のメディアの中には、日中韓での連携よりも米国主導のTPP(環太平洋経済連携協定)への参加を優先すべき、という意見がある。しかし、今後の日本の輸出や経済にとっての重要性は、中国や韓国のほうが大きい。