《日本激震!私の提言》世界のパラダイムの転換期、日本だけが旧態依然の懸念--孫崎亨・元防衛大学校教授

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 両国と経済面で緊密さを増すことは安全保障の面でも意義が大きい。欧州石炭鉄鋼共同体が欧州連合に発展した例に見るように、経済的な結び付きを深め、相手が軍事的に攻撃したらかえって損失を被るという関係を作ることが、安全保障上は最も効果がある。

つまり、すなおに日本の国益を考えると、経済界からもっと中・韓を重視する声が上がっていい。今の中国は、経済的にも軍事的にもようやく日本に並んだ状態だが、10年後にはもっと強くなる。今の重要な時機に、先方が投げてきた提案を受け止められないのは残念なことだ。

--日本では経済、安全保障とも米国寄りの意見が強い。

ある人によれば「“環太平洋”と訳したことで、TPPが大きなグループだという印象を与えている」という。参加国を見ると、米国主導で、成長著しいブラジルやアルゼンチンは参加していない。こうした国は米国から離れて独自の発言力を持ち始め、米国は巻き返したいと考えている。欧州も、中南米も、米国から距離を置きつつある。

中東・アフリカの民主化も、当初は米国にプラスのように見えるが、潮流としては米国離れの方向へ動く。パレスチナをめぐって、米国は親イスラエルであるという2国間関係の歪みを抱え、米国の政策は中東・アフリカの民衆に受け入れられていないからだ。

日本だけが、米国べったりだ。しかも、日本の「米国通」と呼ばれる人たちは、米国の主流派と付き合っているのではない。日本に対して植民地意識で接するいわゆるジャパンハンドラーの意向を伝え、これに従っているだけだ。ジャパンハンドラーとは、最近、沖縄県民に対する最低の発言を行ったメア元日本部長やキャンベル、アーミテージといった人たちだ。だから米国との間で、相互の国益を踏まえて落としどころを探る、という外交ができていない。

国際関係から原子力まで、いろいろな面でパラダイムシフトが起きているのに、日本だけが旧態依然とした考え方を引きずっている。

まごさき・うける
1943年旧満州国生まれ。66年東京大学法学部中退、外務省入省。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。2002~09年防衛大学校教授。『日米同盟の正体-迷走する安全保障』、『日本の国境問題-尖閣・竹島・北方領土』など著書多数。

(週刊東洋経済2011年6月11日号掲載 記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

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