《日本激震!私の提言》3年間のペアリング支援で地域主権の復興が可能に--石川幹子・東京大学大学院教授

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必要なのは地域に根差すリアリティのある計画

--国の復興構想会議だけでは不十分ということか。

中央で議論しているだけでなく、それぞれの地元に張り付いてチャネルを作らないと具体的に物事は動かない。それに、自分たちの町の復興は自分たちで決めるという「地域主権」が重要だ。この意味で日本の民主主義の真価が問われている。

私は東京大学と岩沼市とのペアリングを4月から始め、復興計画を作っている。集落全体で安全な所へ移住したいというのが被災者のみなさんの意向なので、まず、それが前提となる。

仙台平野の地形には阿武隈川の氾濫の歴史が刻まれている。こうした土地の履歴を基本にして考えた。住宅は内陸部に移し、今回の震災で生じたがれきを使って沿岸から1キロメートルの間に丘を複数造り森にしていく。多重構造の丘で津波の勢いをそぎ、住宅地にまで及ばないようにする。丘を造れば、景観も美しく、防災にもなる。渡り鳥の飛行ルートであり、絶滅危惧種の生物もいるので、生物多様性を維持する森にもなる。

津波に対抗する高さの人工地盤を造るという議論があるが、それでは時間とお金がかかりすぎる。景観も美しくない。現実を厳しく認識した、責任のある提案が必要だ。

リアリティがあり、かつ夢と希望のある計画を作ることが大事だ。今、岩沼市の農業支援の一環で、塩を被った土地で育てると甘みが出るトマトを栽培する計画を進めている。塩害を逆手に取ったもので、大阪・住吉のロータリークラブが援助してくれることになっている。がれきで山を造る試みには、ネーミングライツで資金を導入する計画だ。

自分の町の復興は、自分たちから立ち上げるという志が大事だ。壊滅した町で、モノだけではなく、将来の夢や暮らしの場の再生につながるこのような支援も、重要であることを知ってほしい。

いしかわ・みきこ
東京大学農学部、ハーバード大学デザイン学部大学院卒業。日本学術会議会員、農学博士、技術士。工学院大学建築学科などを経て、現在、東京大学大学院工学系研究科教授。著書に『都市と緑地』など。全国約200の市町村の水と緑の計画・設計に携わる。

(週刊東洋経済2011年6月4日号掲載 記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

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