《日本激震!私の提言》3年間のペアリング支援で地域主権の復興が可能に--石川幹子・東京大学大学院教授
重要なことは、単なる復旧ではなく、都市と農村の格差という、中国が直面している大きな問題の解決に取り組んだことだ。被災地の農村では近代化がほかの地域に先駆けて一気に進み、モデルケースとなった。
今回、関西広域連合は自主的にペアリング支援を始めており、たいへん立派だと思う。本格的復興のためには国が音頭を取り、被災地全体にペアリング支援を導入すべきだ。現在の避難所生活でも、すでに地域によって格差ができつつある。資金や人材に差があるからだ。特にリーダーのいる所といない所との違いは大きい。格差が広がらないうちに、ペアリング支援のための法の枠組みや制度を整備する必要がある。
--日本学術会議で提唱したのに、政府はなぜ導入しないのか。
政府はすでにやっていると言う。しかし、それは物資の供給や医療などの短期支援にとどまっている。復興へ向けた長期支援ではない。これは明確に区別しないといけない。
「長期支援」といっても、自力更生が基本であり、ペアリング支援は3年くらいをメドにすべきだ。現在、被災地の自治体との間でペアリングが成立しているわかりやすい例は自衛隊だ。国が法や制度を整備して自治体同士のペアリングを行い、現地で取り組むテーマ、たとえば、農業や水産業の復興、空港の再建などの分野別にタスクフォースを作るのが復興には有効だ。民間企業、NPO(民間の非営利組織)、ボランティア、国際社会などがこれに参加できる。今はチャネルがないので、こうした人々や組織がらち外に置かれ、その善意を生かせていない。
各自治体が10人でやっている仕事を9人にして一人を被災地に派遣すれば、派遣した側の自治体も防災能力を高められるし、逆に自分たちが災害に見舞われた場合には、援助を受けることも可能になる。法や制度によって身分が保証されないと長期支援には取り組めない。日本ではどこの自治体も財政状態が厳しいので、中国の場合のように資金面までは支援できないが、支援する人材と組織を作れば、そこが動いて民間から資金を導入することもできる。