「じゃんがら」全力でヴィーガン料理を開発した訳 人気のラーメンも忠実に"再現"した結果

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ヴィーガンビストロ じゃんがらも、安西副店長をはじめ、店のスタッフの多くがノンヴィーガン。「私たちだけでなく、九州じゃんがらの店のスタッフにも来てもらって、皆が試食してOKと言ったものだけを提供してきました」(安西副店長)。

渾身のチャーシューの出来栄えは?

そして提供されたチャーシューは、豚肉と見まがう食感と見た目。味は高級薄揚げに近いものの、ラーメンの場合は汁、他の料理はソースの力もあるのか大豆臭くない。実際、「ヴィーガン料理のイメージが変わりました」と言う客は多い、と安西副店長は言う。

安西副店長のヴィーガン料理をノンヴィーガンの人にも、という思いは本物だ。何しろ、長年できなかったダイエットが、同店の賄いを半年食べ続けただけで成功し、10キロもやせたのだから。

日本人の来店者も、今では北海道から沖縄まで全国に及ぶ。東京ではヴィーガン料理店の選択肢もできつつあるが、地方ではほとんどない地域も珍しくない。わざわざ上京して食べ、地元への出店を望む客も多いが、「まずはこの店でしっかり土台を固めてから」と安西副店長は慎重に話す。

日本は、諸外国に比べヴィーガンの広がり方が少ない。もちろん、もともと日本人は欧米人ほど肉を多く食べるわけではない、という事情もあるが、そもそも日本はSDGsへの取り組みなど、環境意識が高いとはあまり言えない。そんな中、飲食業は海外旅行客を通して、世界の情勢を肌で感じてきた業界と言える。

ヴィーガンラーメンも、九州じゃんがら以外にも商品化している店がある。もしかすると、程遠かったように見える肉食文化の飲食店の現場から、日本は変わり始めているのかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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