「勉強にハマる子」の親が熟知する"4大要素"の威力 わが子は「非認知能力が足りない」と嘆く親たちへ

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(1)面白く、楽しくさせる

「具体化」「制限時間」「ヒント」「見える化」という、前述の4要素を勉強に取り入れます。

① 「具体化」とは子どもが知っている物事、世界に置き換えることです。例えば、算数の文章題で「太郎さん、花子さん」がでてきたら、「炭治郎、禰豆子」に置き換えたり、電車の好きな子であれば、「JRと(地元の)私鉄」に置き換えたりすることです。身内の誰かに置き換えることも可能です。つまり、子どもがイメージできる世界の物事に置き換えてあげるだけでスイッチが入ります。

② 「制限時間」はクイズなどではよく設定されますね。ゲームでも短い時間で早くやらないとこなせない状況もあります。勉強では、◯ページまで終わったら休憩といった進め方をすることがありますが、そうではなく、3分でどれだけできるか、正答率は何%かということを要素として入れると、子どもたちは楽しみだします。

③ 「ヒント」は、なぞなぞやクイズではよくありますよね。ヒントが出されたことではじめて答えられても、子どもたちは自力で答えられたと感じます。すると、もっとやりたいという気持ちが誘発されます。勉強でも、わからないことに対していきなり解説をするのではなく、ヒントを入れて、自力で答えられるようにしていきます。第1ヒント、第2ヒントくらいが限度です。あまり言うとほぼ答えになってしまいますので。ヒントがあると、好奇心、主体性や粘り強さのみならず、思考力も引き出すことができます。

④ 「見える化」とは、図や絵でわかるように見せていくことです。ゲームにはリアルタイムで成長が見える化されていますが、勉強にはそれがありません。たまにやるテストの結果程度ではモチベーションは持続しません。

勉強の見える化にはいくつも方法がありますが、例えば、勉強時間を分単位で毎日記録することや、漢字表を壁に貼って終わった漢字は消す作業をするという方法です。また図や絵、さらには動画で見せていくことも見える化になります。言葉だけの説明では、わからないことが多いものです。

徐々に親の手を放していけばいい

(2)自分で面白がり、楽しめるようにする

以上のようなことを心がけていくだけで、子どもたちがもともと持っている非認知能力が勉強と接続すると思いますが、それだけではまだ十分ではありません。

いつまでも大人が一緒にやれるとは限りません。そこで、子ども自身が自分でそのような状態になれるようにスライドさせていくことが必要です。つまり、子どもの頭脳に「変換装置」を作るようなイメージです。

スライドの仕方は、難しくはありません。徐々に親の手を放していけばいいのです。「徐々に」とは、部分的にという意味です。はじめは親がすべてやっていた歯磨きが、奥歯だけやってあげるようになり、やがて仕上げだけやり、最後は自分一人でできるようになったように。いきなり今日から一人ですべてやりなさいとはならなかったはずです。このように、何事も徐々に手放していくことで、自然と子どもの中で「変換装置」ができ、それが起動し始めます。

広範囲な意味を持つ非認知能力のすべての要素が上記のプロセスで満たされるわけではありませんが、以上のような手順で進めることで主だった要素はクリアできるはずです。

もともと、子どもたちが持っている非認知能力をこのようにうまくさまざまな分野に“接続”してあげることで、副産物として子どもの自己肯定感も自己効力感も満たされていくと思います。

以上、少しでも参考になれば幸いです。

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石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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