筆者は当時、取材を重ねる中で、2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、2010年の広州・アジア競技大会という一大国家イベントを、中国政府はEVバスなども含めた「最新技術のショーケース」として位置付け、中国の経済力強化を国内外に強くアピールしていたことを実感したものだ。
中国政府はそうした一大国家イベントを基盤として、第12次5カ年計画(2011~2015年)の中で、環境やIT分野における革新的な技術開発を目指す方針を定めた。
EVについては、「十城千両」と呼ぶ国家施策を25都市に広げて、EVバスやEVタクシーの普及を狙ったという経緯がある。
そんな2010年代前半、佐藤氏は中国でEVバス等に関する研究開発を進めることになる。
佐藤氏によれば、2007年に日本と中国の政府間交渉による「環境・エネルギー分野における協力推進に関する共同コミュニケ」が、このプロジェクトに対する「大きな後押しになった」と当時を振り返る。
こうして佐藤氏は、日本では福島復興、中国では次世代技術開発という観点で、EVバスの開発に深く係わるようになっていく。
EVモーターズ・ジャパン設立の背景
EVモーターズ・ジャパンの設立は、2019年だ。佐藤氏は、設立の経緯を次のように話す。
「(日本市場も視野にEVバスを量産化する場合)保安基準として日本専用のボディ寸法が必要であり、また沿岸部の走行や凍結防止剤による塩害での腐食を予防し、(新車導入から)20年以上にわたって利用できるEVバスを日本専用に設計する必要がある。その場合は、限定した電池メーカーと商取引をする必要があるからだ」
それまでの電池メーカー業界と広く商取引をする事業体制とは一線を画し、新会社を設立するための資金を調達する必要性があったという解釈である。
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