訪日外国人が満喫!一味違う「日本の地方旅行」 ガストロノミーでどう訪日客を引きつけるか

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長年にわたって地元料理界を牽引してきた奥田政行シェフ(農林水産省が顕彰する「料理マスターズ」2023年の最高賞を受賞)は、より具体的に「コミュニティーを円滑に作る」「それぞれが持つ特徴、強みを整理する」「それぞれの立場で最高のパフォーマンスをする」と、3つのポイントを挙げ、チーム力の向上を提言する。

さらに鶴岡市では、全国的にも稀な、その地の歴史や伝統に加えて、食文化や料理の専門的な知識を有する「ふうど(食 ✕ 風土)ガイド」を育成、認定している。彼らが地域のさまざまな関係者間の連携を促す架け橋になり、ガストロノミーツーリズムの推進の一翼を担う存在になっていくことも期待されるだろう。

このほか受け入れ体制の整いつつある鶴岡市へのアクセスをどう作るか、といった交通面も課題だ。来訪を待つだけではなく、東京や大阪、京都など外国人が多く集まる地域からの利便性の高い移動手段を整備することも、本格的なインバウンド誘致に必要な施策になる。

受け入れ体制を整えていく必要がある

鶴岡市は東北でもっとも積極的に観光PRを行い、実績につなげている自治体のひとつだ。そこにはアクティブな行政と、地元の生産者、料理人、寺社仏閣などの観光地、観光サービスといった関係各所の地域への愛と誇りがあり、振興への高い志がある。

それをどう相乗的に高めあって、さらに発展させていくか。文化庁の本採択事業への応募団体であるDEGAM鶴岡ツーリズムビューロー(一般社団法人)の事務局長・大宮將義氏は「今回の結果を活かして、市や関係各所と連携しながら、目標を持ってインバウンド受け入れ体制をしっかりと整備していきたい」とこれからの道のりを見据える。

外国人向けだった今回のツアー内容は、インバウンドだけではなく、国内向けの高付加価値体験としても今後、市場に活かされていくだろう。

鶴岡市の観光施策は、全国各地から視察が来るなどその動向が広く注目されている。食の都としてのポテンシャルが、国境を超えて世界に浸透していく成功事例となることが期待される。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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