訪日外国人が満喫!一味違う「日本の地方旅行」 ガストロノミーでどう訪日客を引きつけるか

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また、明治初期に旧庄内藩士によって開墾され、全国有数のシルクと果物類の生産地となった松ケ岡のワイナリー、ピノ・コッリーナは、地産シルクと庄内米の米粉を混ぜ込んだフォカッチャ(パン)が名物の1つ。ツアーに参加した発酵料理に詳しい料理家の井澤由美子さんも「シルクをジュレにして生地に練り込んだパンは非常に珍しい」と話した。

ガストロノミーツーリズム
松ケ岡のワイナリー、ピノ・コッリーナのワインとワインプリン(撮影:弥桜)

今回のツアーのメインは、鶴岡の歴史と縁深い旧庄内藩当主の後嗣・酒井忠順氏がホストとなった、酒井家ゆかりの致道博物館の御隠殿でのモニターとの夕食会だ。国の名勝に指定された庭園のライトアップを眺めながら、酒井氏本人から庄内の酒井家の歴史と食文化のつながりを聞き、鶴岡の食材によるフルコースのプレミアムディナーを楽しんだ。

ガストロノミーツーリズム
致道博物館の酒井家の御隠殿でのプレミアムディナー。鶴岡の食材を使ったフルコース料理(撮影:弥桜)

外国人参加者に話を聞くと、歴史建造物の説明が専門的で難しかったというアメリカ人男性の声があった一方、ツアー全体を通して、ほとんどのモニターが、この地のバックグラウンドを生産者や料理人など当事者から直接聞くことでシンパシーを感じ、食文化を理解して料理を味わうことを存分に楽しんでいる様子だった。

今回の取り組みに関して、日本におけるヴィーガン・プラントベース料理の第一人者であり、社会貢献活動として「ソーシャル・フード・ガストロノミー」を提唱する杉浦仁志シェフは「鶴岡市には独自性のある食と結びついた歴史文化があり、世界に勝てる地の食文化が根づいている。従来の発想と視点を変えて、外国人に向けた発信をどう切り開いていくかが次のフェーズだ」と話した。

外国人を呼び込むための課題も

外国人を引きつける食文化がある一方で、課題もある。それは、料理人や生産者、宿泊施設、観光事業者など関係者それぞれの立場ごとにガストロノミーへの意識や視点が異なることだ。

個々人で取り組むのではなく、地域が連携してチーム一丸となり、街全体のあらゆる部分で、外国人を迎える体制を整えなくてはならない。

競合になる地域のさまざまなリソースのパートナーシップをどううまく醸成し、コミュニティーを作っていくか。そのための発信や啓蒙は、自治体の役割になるだろう。

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