訪日外国人が満喫!一味違う「日本の地方旅行」 ガストロノミーでどう訪日客を引きつけるか

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鶴岡市は、20年ほど前から「食の都・庄内」を掲げ、地元の地産食材や伝統料理を積極的にPRしてきた。

2014年には日本で最初の「ユネスコ食文化創造都市」(現在は日本で鶴岡市と大分県臼杵市の2都市が認定されている)に認定されたほか、文化庁認定の「日本遺産」に2016年には同市の出羽三山が、翌年にはサムライゆかりのシルクもそれぞれ登録された。

近年は、東北有数の観光振興の先進都市として存在感を高めるなか、コロナ禍を経て、国内だけでなく海外も本格的に視野に入れる。

多種多様な文化、宗教に属する外国人の受け入れに向けて、案内板など情報掲示の整備のほか、食に関してはヴィーガンなどベジタリアンに対応した地産料理の対応の勉強を進めているのだ。そうしたなか、実証事業の第1弾として実施されたのが、今回のモニターツアーだ。

外国人が精進料理に舌鼓

本ツアーは、出羽三山(羽黒山、月山、湯殿山)の雄大な自然に囲まれる鶴岡において、江戸時代から庶民に親しまれた「出羽三山の旅」がベースとなっている。山の修行で「精進潔斎(肉食や酒を断ち、心身を清める)」して生まれかわり、下山後は温泉につかって俗世に戻り、地酒や旬の食材、海の幸を食し「精進落とし」をする、といった内容だ。

今回は2泊3日の行程を通して、特別な設定や演出(致道博物館の御隠殿での夕食と庭園ライトアップ、湯田川温泉神楽の実演鑑賞、善寳寺での雛菓子体験など)が随所に組み込まれた。ツアー行程に沿って、毎食ごとにその日に訪れた鶴岡の歴史と文化が料理から語られ、旅そのものが食を通したストーリーになっていた。

ガストロノミーツーリズム
国の名勝に指定されている致道博物館の御隠殿の庭園を今回のモニターツアーのためにライトアップした(撮影:筆者)

ガストロノミーを掲げる料理で象徴的だったのは、出羽三山神社の羽黒山参籠所「斎館」での精進料理だ。斎館は、現在も修験者や信者が精進潔斎する場所である。羽黒山伏伝承の精進料理について伊藤新吉料理長から説明があった後、羽黒山の天然の山菜やキノコを使い、乾燥や塩漬け、燻製などいくつもの製法によって異なる味付けにした、色彩も味わいも豊かな膳が出された。

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