デザイン思考の壁を突破する哲学シンキングとは 哲学はビジネスの場面で大いに活用できる

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それどころか、「なぜに対する答えがそもそもない」ということもあるでしょう。「なぜ○○したのか」と他人から問われ、自分自身で思いを巡らせても明確な答えがないという経験は、誰しも一度や二度あるはずです。

「当人がなぜに対する回答を自覚しておらず、言語化できない」という場合もあれば、「(当人の自覚とは関係なく事柄として)そもそも問いに対する解がない」「本能的行動だったため、合理的な説明はできない」という場合など、いくつかのパターンがあるでしょう。そうした場合には、「なぜ」という問いかけ自体が的外れであって、問い方を置き換える必要があります。

哲学シンキングでは、「問いを立てる」「問いを整理する」「議論を組み立て、視点を変える」「核心的・革新的な問いや本質を発見する」という4つのステップで思考を掘り下げていきます。「定義」や「意味」、「価値」、「基準」、「条件」、「タイミング」など、複数の角度から問い、リフレーミングすることで、意識されざる前提や固定観念を覆していきます。その結果、斬新な発想や、チームで腹落ちするコンセプトも見いだされていくのです。

どんな未来を描きたいのかを言語化する

アイデアが無数に出ても、最終的にどれがいいかを選ぶ際には、「自分たちは何をよしとするのか」が明確になっていないといけません。マーケットが何を欲しているかを考えることはもちろん大事ですが、それに劣らず、自分たちは何を打ち出したいのか、どんな未来を描きたいのかを言語化することも重要です。

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ポイントは、「自分たちは何をしたいか/なすべきか」という問いと、「自分たちは何をしたくないか/なすべきではないか」という否定的な問いが表裏一体である点です。後者を明確化することで、どれを選ぶべきか判断に迷うような複数のアイデアのうち、どれを選ぶべきではないかも明確化されていきます。つまり、To-Doの策定だけではなく、Not-To-Doを策定することでぶれない基軸が確立されます。

プロジェクトメンバーたちが本音で対話し、ぶれない基軸をつくることは創造的なチームビルディングにもつながります。お互いに気をつかって本音を言えなかったり、忖度し合ったりするようなプロジェクトや組織では、斬新な発想は生まれにくくなります。本音の隠蔽や忖度は思考にバイアスをかけ、フレームを制限するからです。

本音で対話をすることで、プロジェクトや組織のチームが創造的に協働する土壌ができあがります。

以上のことは、デザイン思考に対応させれば、ステップ1の前段階やステップ2の問題定義、ステップ3のアイデア創造で有効に機能しますが、デザイン思考に限らず、さまざまなビジネスの場面で活用することができますので、ぜひ取り入れてみてください。

吉田 幸司 クロス・フィロソフィーズ社長

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よしだ こうじ / Koji Yoshida

クロス・フィロソフィーズ(株)代表取締役社長。博士(哲学)。上智大学哲学研究科博士課程を修了後、日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)などを経て、現職。2017年5月、「哲学」を事業内容に掲げた株式会社を設立し、哲学の専門知と方法論を活かした「哲学コンサルティング」や、人材・組織開発、ビジョン構築などに使えるワークショップを実施。哲学シンキング研究所センター長、上智大学非常勤講師、日本ホワイトヘッド・プロセス学会理事などを兼任。

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