「起業は自己実現、でも経営は修行」である理由 元起業家・起業家・私設図書館長が組織論を語る

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平川:栗原さんの立場に立つと、今のマインドを持ち続けながらやるのはすごく難しいこと。

だけど、例えばAppleが最初に出て来たときにヒッピー文化を企業文化の中に入れたんです。Tシャツで仕事したり上下関係をなくしたりね。

平川克美(ひらかわ かつみ)/作家、隣町珈琲店主。1950年、東京・蒲田の町工場に生まれる。75年に早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、内田樹氏らと翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立。1999年、シリコンバレーのBusiness Cafe Inc.の設立に参加。2014年、東京・荏原中延に喫茶店「隣町珈琲」をオープン。著書に『株式会社の世界史』(東洋経済新報社)、『小商いのすすめ』(ミシマ社)、『移行期的混乱』(ちくま文庫)などがある

それを僕は「1回半ひねりの働き方」って言ってるんだけど。それが外側から見るとものすごく魅力的に見えたのね。そもそもヒッピーっていうのは主流から離れて周縁にいた人たちでしょう。この人たちの文化を取り入れて、魅力的に見せたんだよね。そういうことが鍵だと思う。

やっぱりやっている人たちが楽しんでいることは大切だよね。僕らが最初の会社で成功できたのは、僕ら営業で商社を回るんだけど、そのときにみんな話を聞きたがるんだよ。お前らなんでそんなに楽しそうなのって。みんなバイクで乗り付けて、翻訳の仕事ありませんかって営業して回る。なんか自由な感じに見えたんだよね。それを楽しそうにやっていたことが重要だった。

僕は最初の会社の社訓を「面白がる精神」っていうのにしたのね。面白くないかもしれないけど、まあ面白がろうよと。どうやったら面白がれるかをみんなで考えようっていう。やっぱりやってる連中が面白がってやること。そういうところを目指せるかどうかなんだろうね。上からの改革は難しいかもしれないけど。

ブルシットジョブとの付き合い方

栗原:最近よく聞くいわゆるブルシットジョブってありますよね。もちろんPOPERの中でもブルシットジョブがすごく多くて。それにずっと付き合っていると「自分が何のためにこの仕事をしているのか」がわからなくなってくる。無意味なことをやり続けていることで、自分が傷ついているのがわかるんですよね。でもその無意味な仕事が売り上げにつながるからやらなくちゃいけないという側面もある。だけど経営者としては、現場の人たちにそういう仕事が集中しないように腑分けすることが大事だと思っています。

そういう無意味な仕事をどう処理していくかということを、構造的に避けられるようにしていくことが大事だと思っています。

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