「起業は自己実現、でも経営は修行」である理由 元起業家・起業家・私設図書館長が組織論を語る

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平川:ある人が『共有地をつくる』(ミシマ社)っていう俺の本を読んで、平川さんは会社を作って、その会社を成功させて金儲けするってことがしたいわけじゃなくて、共有地であったりコミュニティーのようなものを作りたかったんですねって言われたんだけど、確かにそういうところもある。だけど本当はそうじゃなくて作家になりたかったんだよ。でも作家になれなかったから、その代償として何か創造的なことをやりかったの。

株主資本主義への疑問

栗原:やっぱり経営者って我慢したり、つらいですよね。中国古典にもありますけど、諌められたら聞かなきゃいけないのが経営者の徳であると言われる。私も創造的なことをしたいという思いもあったので、当初は事業を通じて自分の表現したいことをするんだと思って事業と表現を合体させようとがんばっていたときもありました。

【写真右】栗原慎吾(くりはら しんご)/POPER代表取締役CEO。1983年埼玉県さいたま市(旧与野市)生まれ。明治大学経営学部卒業後、住友スリーエム(現:スリーエム ジャパン)に入社する。歯科用製品事業部に配属され、2010年にはグローバルマーケティングアワードを受賞。その後ソウルドアウトに入社し、Webマーケティングを担当。2012年、友人に誘われ塾の共同経営者として参画し、経営から講師まであらゆる業務を経験。当初20名ほどの生徒数を60名にまで増加させる。塾業界のシステム化を進めるべく、2015年にPOPERを設立し、現職。2022年、東証グロース市場に上場
【写真左】青木真兵(あおき しんぺい)/「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター、古代地中海史研究者、社会福祉士。1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークとしている。2016年より奈良県東吉野村に移住し自宅を私設図書館として開きつつ、現在はユース世代への支援事業に従事しながら執筆活動などを行っている。著書に『手づくりのアジール──(土着の知)が生まれるところ』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館──ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(エイチアンドエスカンパニー)などがある 

でもやっぱり事業は表現活動とは違って、どうしてもニーズに合わせていくということだと思います。だから真兵と話せることはとてもよくて。経営者としてではない領域と関わるのは大事ですね。

それと会社とは何かっていうときに、コーポレートガバナンスのことが気になっていて。ここ数十年どんどん会社が株主のものだと言われるようになっているけど、株主資本主義に対していろいろな疑問がもたれているのが今という時代なのかと思います。

代表的なものがSDGsやESGなどで、会社の価値を利益創出力だけに目を向けずに、地球環境問題などにどれだけ貢献しているかなどの指標を導入すべきといったことに大きな関心が集まっています。そういう意味で、今後は新しいコーポレートガバナンスのあり方が出てこざるをえないんじゃないかという期待があります。

何年後か何十年後かわかりませんけど、そのときにPOPERっていう会社が株主資本主義に代わるような地域社会とか地球環境、もちろん株主も含む多様なステークホルダーを見据えて経営をしていたと思われたらいいなと思っていて。

平川:それは大事なことだね。

青木:そういうことを慎吾は目指しているんですけど、平川さんが本書でも書かれていますが、グローバル化した世界においてそういう「身の丈の経営」をしていくためにはどうしたらいいのでしょうか。

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