お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤
OpenAIは2015年12月、アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。
AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた。
設立時には、10億ドルの寄付を目標に設定。総額約1.3億ドルの寄付を受け、組織の運営や、ディープラーニング、AIアライメント(AIが人間の価値観、目標、意図に沿って行動するようにすること)の研究などに使用された。
数年で「ハイブリッド」組織へと転換
しかし2019年3月に、その組織形態を大きく変えることとなる。OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される。
営利と非営利のハイブリッドな組織に見直した背景について、OpenAIは「アルゴリズムの革新に加え、多くの計算能力を使うことになったことで、OpenAIを始めるときに計画していたよりもはるかに速くスケールすることを決めた」ためと説明していた。
他のIT企業もAI事業に本腰を入れる中、業界をリードするポジションであり続けるには、大規模なクラウドやAIスーパーコンピューターの構築、さらには優秀な人材の確保が欠かせない。そのためには数年間で数十億ドルの投資が必要となり、企業からの出資などを受けられるよう組織形態を変えたわけだ。
実際、そのわずか数カ月後にはマイクロソフトとパートナーシップを締結し、同社が10億ドルの出資を行うと発表。 マイクロソフトは2023年1月にも、複数年にわたって OpenAI に数十億ドル規模の投資を行う方針を発表し、マイクロソフトのAzureは、OpenAI の独占的なクラウドプロバイダーとなった。
これら一連の提携を先頭に立って交渉してきたのが、アルトマン氏だった。
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