「安すぎる日本アパレル」値上げできない深刻な訳 物価高なのに、値上げできない納得の理由は?

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大きな要因は、値決めのやり方が古く、プライシングに科学的・定量的な戦略アプローチを適用できていないことにあります。

日本では、業界に古くから残る慣習として、下代(原価)に一定の掛け率をかけて上代(売価)を決めるという考え方があります。

このような原価ベースの考え方をもとに、ブランドのMDが経験と勘に基づいて、なんとなく売れそうな価格を予想して値決めしているというブランドが数多くあります。

このような属人的な方法では、大胆な値上げや粗利の最大化はできません

他方プライシングは、アカデミックからビジネスまでさまざまな研究と科学的・定量的なアプローチが試みられている領域です。

日本マクドナルドの「地域別価格戦略」に学べ

実際、2022年以降3度の値上げを実施し、2023年7月には地域別価格を導入し話題となった日本マクドナルドは、2023年12月期の連結営業利益が過去最高の400億円に達する見通しです。

価格を「都心店」「準都心店」「通常店」の3つに分ける地域別価格戦略が、業績面で大成功だったことをまさに物語っています。

マクドナルドの成功事例は、いまだに一物一価が当たり前の多くの国内アパレルに対して示唆に富んでいます(なお、アパレルでも値引き率を店舗により柔軟に変えることで、実質的に地域別・店舗別価格を導入し成功している企業はあります)。

次回は、アパレル業界における実践的なプライシング戦略を紹介します。

*この記事のつづき:苦戦する「日本アパレル」、値上げする"4つの秘策"

福田 稔 KEARNEYシニアパートナー

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ふくだ みのる / Minoru Fukuda

慶應義塾大学卒業、IESEビジネススクール経営学修士(MBA)修了。電通国際情報サービス、欧州系戦略コンサルを経て、A.T. カーニー入社。主に、アパレル・繊維、ラグジュアリー、化粧品、小売、飲料、ネットサービスなどのライフスタイル領域を中心に、戦略策定・ブランドマネジメント・グリーントランスフォーメーション・DX等のコンサルティングに従事。プライベートエクイティやスタートアップへの支援経験も豊富。経済産業省の産業構造審議会 繊維産業小委員会委員、繊維製品における資源循環システム検討会委員、ファッション未来研究会副座長。著書に『2030年アパレルの未来』『2040年アパレルの未来』(共に東洋経済新報社)がある。

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