池上彰が考える「中学受験の成功」より大切なもの これからの時代を「生きる力」を手に入れる

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これからの時代は、自分で調べ、考え、そこからまた知識や考えを深めていける人材が必要だということのあらわれなのでしょう。

そして、そういう能力を求められているのは、中学受験をするひとにぎりの子どもに限ったことではありません。

少し前の話題ですが、バスケットボールのワールドカップで日本がオリンピック出場を決めましたね。

その時の試合相手は、カーボベルデ共和国でした。この国のことを知らない人は多かったと思いますが、そんな時こそお子さんにぜひ働きかけていただきたい。

カーボベルデってどこにあるのかな? どんな国なんだろう? おや?ベルデってポルトガル語で緑(VERDE)という意味なんだって。だから「東京ヴェルディ」(ヴェルディはVERDEから生まれた造語)のチームカラーは緑なのか!――親子でそんな話をしながら知識を広げていく。

ものを知ることは面白いし、そこからさまざまな発見もあるでしょう。

考えを深めるきっかけは暮らしのそこここにあり、教養に結びついていきます。子どもたちにはぜひ教養を身につけてもらいたいし、親御さんはわが子に教養を身につけるように導いてあげてほしいと思います。

受験生の親に必要な資質とは?

ものごとを掘り下げて考え、自分なりに行動する姿勢を身につけているかいないかで、学びの質はずいぶん違ってきます。深い学びに基づく教養は、思いがけない災難や人間関係のトラブルに見舞われた時に、解決策を見いだす力になるはずです。

教養とはいわば、生きる力です。

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教養は、困難な時に助けてくれる人や情報にたどりつく道しるべになります。教養がある人は周囲の信頼が厚く、自己肯定感も高くなる。幸せな人生を送るための、心強い武器になってくれるのです。

中学受験は、教養を身につけるきっかけになり得るでしょう。

その一方で、親の期待に応えようとして頑張ったのに不合格だったりすると、子どもは劣等感を抱いて長く苦しむことにもなりかねません。

過大なプレッシャーをかけず、うまくいかなかった時に子どもにコンプレックスやトラウマが残らないような心配りができる。中学受験を選択するなら、親の側にもそういう教養が求められているのだと思います。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶應義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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