鹿児島「鉄道廃止」と関係なく発展した街の現在 旧大隅線古江―志布志間、人口約10万の鹿屋市
国分から鹿児島交通の路線バスを乗り継ぎ、古江に11時12分到着。ここから鹿屋方面へのメインルートである国道220号は内陸部へ入るが、鉄道は高須を経由していたので、そちらへ向かう。
現在では鹿児島交通の2023年10月1日ダイヤ改正による大幅減便により、古江―高須間は1日上下2本しかバスの便がなくなったが、取材時には古江港前11時52分発の高須経由鹿屋行きに乗っている。古江港前バス停は旧国鉄古江駅前でもあり、鉄道と海運の結びつきの強さを感じさせる。バスは海を右手に見て走るが、湾岸沿いルートの需要はわずかと察せられ、この時も先客はなかった。
高須からは国道269号に入り、一気に坂を登る。南九州の特徴的な地形、シラス台地だ。水利に乏しいため稲作ができず苦しんだ土地だが、今はサツマイモなどを中心とする畑作地帯となっている。
駅があった野里を過ぎると、いきなり右手に、まるで空港のような施設が現れ、滑走路を回り込むように走る。1936年に設けられた海軍の基地を前身とする、海上自衛隊鹿屋航空基地だ。周囲は都会的な風景になり住宅地の中に入る。団地があり、バスにも乗車があった。
鹿屋は大隅半島の中核
鹿屋市は2006年に旧鹿屋市と吾平(あいら)町、串良町、輝北町が合併して成立した自治体だ。大隅線が廃止された直後の1990年の国勢調査では、旧市の人口は約8万人弱。それが鉄道の存廃も関係なく増加を続け、2005年には8万人を超えている。平成の大合併で10万都市となったが現在は減少に転じており、再び10万人を切った。主な産業は農業の他、電子工業、食品加工業などだ。
町の中央を流れる肝属川と下谷川に挟まれたエリアが「かつての」中心街で、鹿屋駅廃止後、跡地に移転してきた鹿屋市役所がある。ただ、地方都市の例に漏れず、現在の商業地は市街地の北側を迂回するように建設された、国道220号バイパス沿線などに移っている。
鹿屋バス停も中心街の一角。大型スーパーマーケットや公共施設、銀行、専門店などが集められた再開発エリア「リナシティかのや」前にあった。
感心したのが、どの方面から来たバスでも、路地を一周させるなどして、スーパーの前の、道路の片側にのみ集めて設けられたバス停に発着させていたことだ。バス停を分散させて利用客に無駄な移動を強いるところが多い中、1つの見識を示している。こちらも12時24分に到着し、迷うことなく12時40分発に乗り継げた。古江港から鹿屋までは580円だった。
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