大躍進「翔んで埼玉続編」が話題増産に成功した訳 SNS時代の新たな映画の楽しみ方とPR戦略

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作品とプロモーションが一体化した、「ネタ映画」

「翔んで埼玉」シリーズの作品の重要な点は、作品の中にいくつもの話題にしたくなるような「ネタ」が仕込まれていて、口コミが誘発されるつくりになっているという点だ。

ご当地のトリビアやディスりはもちろん、出演タレントのネタ、他作品のパロディーなど、各シーンに話題にしたくなるネタが盛り込まれている

話題の量産に成功した(画像:「翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~」公式サイトより)

実際、前作がテレビ放映された際に、膨大な口コミが発生したのは、こうしたネタが多数投稿され、拡散されたことによる。

越谷市のイオンレイクタウンで行われた公開記念イベントで、出演者の益若つばささんが「映画を見た方が感想やツッコミを交流サイトやトークで拡散することで映画が終結する。日本埼玉化計画に協力をお願いします」と語っている。

益若氏のこの言葉は、本作品の本質を表していると言える。

公式の宣伝に触れるのみでなく、ニュースやSNSで事前に見て期待を膨らませ、作品を鑑賞して楽しみ、後でSNSに投稿したり拡散したりする。「翔んで埼玉」は、そういうプロセスで楽しみを最大化することができる。

そうした点を考えると、「翔んで埼玉」シリーズは、作品自体がプロモーションの素材になっており、作品の話題が自走する仕組みになっていると言えるだろう。

本作は、現代的な映画のプロモーションを行ったにとどまらず、新しい映画の楽しみ方も提示していると言えるのかもしれない。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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