大躍進「翔んで埼玉続編」が話題増産に成功した訳 SNS時代の新たな映画の楽しみ方とPR戦略

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新作公開に先立つ、11月18日(土)にフジテレビ系列で放送された「翔んで埼玉」の1作目の影響も大きかった。世帯視聴率は7.5%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)であったが、SNSで大きく話題化して「#翔んで埼玉」はトレンド1位を記録した。

ちなみに、初回に1作目が地上波放送されたのは、2020年2月8日だったが、同日のツイート数を筆者が測定したところ70万件超えという膨大な話題量が発生していた。なお、この時の世帯視聴率は16.7%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)を記録していた。

今年の映画界では、「THE FIRST SLAM DUNK」(公開は2022年12月)、「君たちはどう生きるか」のような、”宣伝をしない宣伝戦略“の成功が注目を集めた

これについては、以前の「前代未聞「君たちはどう生きるか」に学ぶ4つの事 スタジオジブリ「宣伝ナシ戦略」をどう見るべきか」で解説したとおりである。

一方、「翔んで埼玉」のプロモーション活動は、これらの作品とは対極の「ひたすら情報を出して、人々にネタにしてもらう」手法を取っている。

こうした宣伝活動が功を奏して、SNS上ではさまざまな話題が投稿され、拡散をしている。作品の公式SNSアカウントはあるが、拡散している話題の多くは、一般人のSNSアカウントからである。

実は、このやり方は、前作でも取られており、本作のプロモーション手法の多くは、前作を踏襲している。「翔んで埼玉」の新作は、前作の成功体験を引き継ぎつつ、さらにプロモーション活動を強化することで、前作を上回るプロモーション効果を生み出していると言えるだろう。

プロモーション活動におけるメディア活用のフレームワークとして、近年「PESOモデル」が使われている。「PESO」の頭文字は、それぞれPaid Media(広告)、Earned Media(メディア露出)、Shared Media(SNS等の口コミ)、そしてOwned Media(自社メディア)を指している。現代においては、これら4つのタイプのメディアを有効に組み合わせることで、効果を最大化することが可能になる。

(図:筆者作成)

このモデルを見ると、「翔んで埼玉」シリーズは、4つの異なるメディアを有効活用して、相乗効果を生んで成功した事例と言えるだろう。しいて言えば、「Owned Media」がやや弱いが、他のメディアが補っているため、十分な効果をもたらしている。

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