「私は右脳型、左脳型」語る人に教えたい残念な真実 最近の研究でわかってきた新しい知見を解説

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例えば脳梁を切断した被験者に2つの物体を示し、1つは左目だけ、もう1つは右目だけで見てもらった。被験者に見たものを説明してほしいと頼むと、全員が左目(右脳)だけで見たものを絵に描いて説明し、右目(左脳)だけで見たものを言葉で説明することができたが、逆はできなかった。

スペリーはこれらの結果を踏まえ、「2つの思考方式」があると結論づけた。言葉を認識、分析する「言語的(左脳型)」思考と、かたちやパターン、色、感情を認識する「非言語的(右脳型)」思考である。

スペリーのこうした発見をきっかけに、右脳や左脳を鍛えるとうたう、さまざまなツールが生まれた。

例えば美術教育者のベティ・エドワーズは著書『脳の右側で描け』(河出書房新社)で、創造性を伸ばすためのデッサンのテクニックを伝授した。学習障害の専門家ケン・ギブソン博士は、左脳を鍛えて分析力を高めるためのテストやエクササイズを開発した。

左脳だけ、右脳だけ働くことはありえない

自分が創造的な右脳型か、分析的な左脳型かを調べるのはとても楽しい。自分の「型」を知れば、どういう人と気が合うのか、どういう状況で仕事がはかどるのか、どういう仕事が向いているのか、といったことがわかるかもしれない。

だが最近の研究で、新しい知見が得られている。少なくとも思考に関していえば、左脳だけ、または右脳だけが働くということはありえないのだ。

スペリーのノーベル賞受賞以降、神経科学の研究は飛躍的進歩を遂げている。なかでも画期的な突破口を開いたのが、1990年代初めに物理学者の小川誠二が開発した、MRI(磁気共鳴画像法)を使って脳の活動を可視化する手法だ。

次ページ活動中の脳のMRIを見ると…
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