こうして彼は3年生から受験勉強を開始します。
高専生の大学進学の手段はほぼ編入学試験に限られます。5年生の5~8月ごろに2年次・3年次編入試験を受け、合格した大学に2年生・3年生から入学するという仕組みだそうです。
「編入学の場合は自分の立ち位置を知る模試が存在しません。当時はTwitterやStudy plusなどで勉強ができる人ばかりを見ていたので、『自分はダメなんじゃないか』という不安な気持ちが強い中で勉強をしていました」
一般的な高専生は4年生から大学の進学を目指して勉強を始めますが、彼は3年の半ばから猛スパートをかけ、1年半ほど編入試験の対策に充てます。
「高専の4~5年生で学ぶ内容はほとんど大学の専門科目・教養科目でした。編入試験のレベルは、大学によって違いますが、大半の大学では通常の大学生が1~2年生くらいでやる数学や物理について聞かれるので一般的な理系の大学院入試と同じくらいの難易度と言われています。
大学や学部学科によって受験科目は違いますが、僕は大学レベルの専門科目は課されず、英語・数学・物理で受験できる大学を中心に選び、その3教科と京大などで課される化学の勉強を進めていました」
勉強を重ねていくにつれ、学年で真ん中以下だった成績も上がっていき、数学は4年生のとき初めて定期試験で100点を取ったそうです。
「最初はこの環境から抜け出したいという動機でしたが、4年生で『ファインマン物理学』という良書に出会って、そのわかりやすさに感動してからはより大学で物理を勉強したいという気持ちが強くなりました」
筑波大に合格したが後悔が残る
こうして、5年生に上がってから複数の大学に出願して編入試験を受けた水無月さんは、進学する筑波大学をはじめ、電気通信大学・東京農工大学などの難関大学に合格しました。
「僕は4年生終了時の成績が24位でした。この席次だと就職の人が多く、進学すること自体が厳しい順位でした。そんな自分でも、過去に上位の席次の人しか合格者がいないような大学に進むことができました」
5年苦しんだ学寮から抜け出せる機会を手に入れ、無事難関校である筑波大学理工学群応用理工学類応用物理学主専攻への3年次編入学が決まった水無月さん。
しかし、それでも彼の中では受験生活への後悔がくすぶっていました。「不完全燃焼だった」受験生活を払拭するため、彼は仮面浪人を決断します。
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