習主席、岸田首相と握手態度で読む日本への心理 表情や態度など非言語で相手国との距離感を示す

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「偶然、この姿勢だったのではないか?」という可能性は低いと考えます。なぜなら、握手を交わし、会話をする相手と正面で向き合わずに横向きで話すということは、コミュニケーションにおいてあまりに不自然です。

また、相手に対し、自身の優位性を直接示そうとするなら、相手に向かって胸を張り、身体正面を向ければ済みます。岸田首相より身体の大きい習主席なら、それで十分です。しかし、そうはせず、カメラの方へ身体正面を向けていたのです。視聴者へのアピールの可能性が濃厚です。

習主席の姿勢に対する他国首脳の対応法

ちなみに、これまでの習主席と他国首脳との握手シーンを見ると、習主席は、岸田首相のときと同様、カメラへ身体正面を向けています。しかし、相手の首脳もカメラへ身体正面を向け、両者とも自分を大きく見せようとする姿勢が多々、見受けられました。両首脳の姿勢が相似形をなしているのです。

習主席の方へ身体正面を向け、握手し、言葉を交わした岸田首相の態度は、謙虚であり、習主席を尊重する良好な振る舞いだと思います。しかし、「どう見えるか」「どう見られるか」というアピールが重要な場では、見せ方・振る舞い方を配慮・再考していく必要があるかもしれません。

私たち人間は視覚から大きな影響を受ける生き物です。姿勢のちょっとした違いが、知らず知らずのうちに私たちの脳裏に刻み込まれ、等身大以上の国力差を感じてしまうかもしれないのです。

清水 建二 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役

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しみず けんじ / kenji shimizu

1982年、東京生まれ。防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。

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