経済学者が考える良いモデルと悪いモデルの違い データを使って世の中の出来事を分析するには
経済学の分野で、革新的な業績をあげ続けているスーパースターのチームが、大学の学部生のために執筆した教科書がある。『アセモグル/レイブソン/リスト 経済学』だ(日本語版は入門経済学/ミクロ経済学/マクロ経済学の3分冊で刊行)。
一流の経済学者は、これから経済学を学ぶ初心者にどんなことを教えようとしているのか。その一部を、抜粋・編集して紹介しよう。
大学には、進学する価値はあるのか?
大学に進学するのは大きな投資だ。
学費はコミュニティ・カレッジ(地域の公立教育機関)で年間2500ドル、公立大学で年間5000ドル、私立大学なら約2万5000ドルかかる(1ドル150円で換算すると、それぞれ37万5000円、75万円、375万円)。
それだけではない。1時間の労働の価値を10ドル以上とすれば、大学教育の機会費用(大学に行かずに時給10ドルの仕事をした場合の費用)は合計で年間2万ドル以上になる。
大学教育を投資ととらえるならば、その見返りをどう考えればいいだろうか? 「教育の便益」とは何だろうか? それを測定する方法はあるのだろうか?
モデルとデータを使ってこの疑問に答えていこう。
経済学の第3の重要な原理は経験主義である。これは、データを使って世の中の出来事を分析するということだ(前回述べたように、第1の原理は最適化、第2の原理は均衡)。
経験主義は、すべての科学的分析において重要な概念である。
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