経済学者が考える良いモデルと悪いモデルの違い データを使って世の中の出来事を分析するには
モデルについて言えば、厳密に正確であるよりも、シンプルで便利であることのほうが重要性を持つ。
科学的モデルによる予測はすべて、世の中を描写する事実や測定結果、統計などのデータを使って検証できる。
経済学者は実証的エビデンスを構築するためにデータを使用するので、自分たちを経験主義者または経験主義の実践者と呼ぶことがよくある。
このような用語はすべて、次の基本的アイデアに帰着する。それは、世の中の出来事に関する問題に答えるために、またモデルを検証するために、データを使用するということだ。
たとえば、ニューヨーク市内の地下鉄路線図なら、その地下鉄に実際に乗って路線図の正確性を確認することで地図モデルを検証できる。
経済学の実証分析では、モデルによる予測を仮説と呼ぶ。
その仮説が利用可能なデータと矛盾するたびに、経済学者はまた振り出しに戻って、新しい仮説を導き出す、より良いモデルを見つけようとする。
経済モデルの例
経済モデルの例を考えてみよう。ここでは極めて簡単化したモデルについて検討する。
しかし、ここでの例よりずっと複雑な経済モデルもまた、現実を極めて単純化したものである。
経済モデルはすべて仮定からはじまる。教育の便益について次のように仮定しよう。教育に投資する年数が1年増えるごとに、将来賃金は10%ずつ増える。
そして、この仮定をもとに、ある人の教育レベルと賃金を関連づけるモデルを作ろう。
賃金が10%増加するとは、元の賃金に1+0.10=1.10を掛けることと同じだ。
この仮定によれば、1年長く教育を受けた人はそうでない人と比較して1.10倍の賃金を得る。たとえば、13年間の教育を受けて時給15ドルで働いている人が、もう1年、計14年間の教育を受けたとしたら、その人の時給は1.10×15ドルで、16.50ドルに上昇することになる。
経済学では仮定を使って、インプリケーション(含意)を導き出す。
たとえばこの仮定に従うと、教育年数が2年増えたら、賃金が10%ずつ2回増えることになるので、合計で21%増える。
1.10×1.10=1.21
では教育年数が4年増えるとしてみよう。10%の賃金の増加が4回あるということなので、合計で46%増えることになる。
1.10×1.10×1.10×1.10=(1.10)4=1.46
これは、大学を卒業する(4年間の教育を受ける)と、高校で教育が終わった場合と比較して、所得が46%増えることを意味する。
言い換えると、このモデルの予測(仮説)では、大卒の所得は高卒の所得より46%高い、ということになる。
ちなみに、ほとんどの経済モデルは、これよりはるかに複雑だ。仮定からインプリケーションを導き出す数学的な分析に何ページも割いている経済モデルはたくさんある。
とはいえ簡単なモデルは、議論の良い出発点になる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら