イランによる「ホルムズ完全封鎖」は非現実的 掃海部隊を中東に派遣する前提に誤り

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
日本の支援が求められる現実的なケースとは?(写真:gussan / PIXTA)

このような完全封鎖といった非現実的な議論が、なぜ生まれるのだろうか。それは機雷使用法と対策へのを誤解があるためだ。

まずは、機雷敷設と海上封鎖を同一視する誤解が広がっている。日本では、大戦末期の瀬戸内海における機雷敷設のトラウマがある。大陸からの食料や石炭輸送が止まったため飢餓寸前となり降伏に追い込まれたことは事実である。が、完全封鎖には機雷約1万2000個が必要であった。

この規模の敷設を行えるのは、米国だけだ。イランは少数敷設しかできない。海峡にごく少数の機雷を敷設しても、保険料増加や原油価格高騰があるだけで通過はできる。

また、機雷対策と機雷処分も同義ではない。掃海等の破壊処分による対抗策は、あくまでも敷設妨害や機雷原迂回といった、数ある手法のひとつでしかない。ホルムズでの小規模な機雷敷設であれば、消極的な迂回でも対応可能である。 

現実的な前提を置くことはできる

もちろん、海自掃海部隊は外交的な切り札である。国際貢献としても極めて有効であり、危険性が低い割には相当の恩を売れる手段だ。しかし、そのための前提の議論として、ホルムズ海峡完全封鎖や、機雷処分がなければ日本が滅びるといった主張はあまりにもおかしい。

現実的な事例はいくらでもあるのだ。たとえば1984年のリビアによる紅海機雷事件やそこでの米ソ英仏による機雷の水中捜索、イラン-イラク戦争での機雷戦激化と1987年の米英による日仏伊への派遣要請、1991年の湾岸戦争後の機雷処分といったケースが現実的な前提である。ホルムズ完全封鎖という非現実的な前提による議論は、すぐに止めるべきだろう。

文谷 数重 軍事ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

もんたに すうちょう / Sucho Montani

1973年埼玉県生まれ。1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。ライターとして『軍事研究』、『丸』等に軍事、技術、歴史といった分野で活動

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事