イランによる「ホルムズ完全封鎖」は非現実的 掃海部隊を中東に派遣する前提に誤り

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(yochizu/PIXTA)

政府がこの前提を置く背景には、米国とイランの対立がある。両国は対立しており、イランはそれなりの機雷戦能力を持つ。対米関係が悪化すれば、イランは海峡封鎖を図るに違いない、というのが今回の前提だ。

機雷敷設の結果、海上交通が完全に停止。そうなると日本の石油輸入が途絶してしまう。そして海峡通航には、機雷を取り除く必要があるというシナリオである。

だが、ホルムズ海峡が機雷で完全封鎖され、そこでの機雷処分が必須となるといった前提は、現実的なものとは思えない。

完全封鎖は強者が弱者に対して行う戦法

完全封鎖を狙う機雷原は、通例は敵の港湾や航路を狙うものとして作られる。ホルムズ海峡はイラン自身も使う海峡であり、その完全封鎖は自国にとっても不都合であり実施はしないだろう。仮に行ったとしても、通例であれば自国沿岸に安全な通行路を用意する。

これは自国や第三国の艦船にはそこを使わせるためだ。過去、太平洋戦争を通じて日本は本土近辺に機雷原を作ったが安全航路は準備している。特に宗谷海峡での敷設は、中立国のソ連のために海峡の北半分を開放するほどであった。そして、日本はイランとの関係は悪くはない。頼めば通してはくれる程度の関係にある。

そもそも、完全封鎖は強者が弱者に対して行う戦法だ。イランが米国に挑む戦法ではない。過去の実例を見ても、海域を完全封鎖する段階まで至ったのは、1945年に瀬戸内海での海上輸送封止を狙った米国の対日攻勢機雷戦(敷設機雷1.2万個)や、1972年に北ベトナムのハイフォン港等を狙ったトンキン湾機雷敷設(合計8000個)くらいである。強者である米国が弱体化した日本、弱者である北ベトナムに対して行ったものだ。米国とイランの関係ではあべこべである。

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