SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル
「まるで“政商”といった感じですよね」——。
ある半導体関連企業の関係者がそう評したのは、総合金融業を展開するSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長だ。理由はここぞとばかりにぶち上げた半導体事業参入でみせる北尾会長の立ち回りのうまさにある。
台湾の半導体製造受託企業(ファウンドリー)であるパワーチップと新会社を設立し、日本でファウンドリー事業を立ち上げるとSBIが公表したのは7月初めのことだった。それから約4カ月。10月31日に行われた会見で、全容が明らかになった。
宮城県大衡村にある工業団地に新工場を建設し、2027年の稼働を目指す。必要となる資金は、この第1期投資だけでも約4200億円、2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。
新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしているという。
「補助金なしにはやらない」と明言
いくら有望産業の半導体とはいえ、8000億円もの巨額資金を調達することは容易ではない。それでもSBIが参入を決めた理由は、無尽蔵とも言える政府支援の存在だ。
「政府からの補助金が前提。補助金が出なければこの事業をやるつもりはない」。北尾会長は会見でそう言いきった。関係者によると、経済産業省との議論が水面下で進んでいるという。会見の場であえて見得を切ったのは、北尾流交渉術なのかもしれない。