夫婦を襲う「中学受験クライシス」のまさかの末路 心理学的に読み解く「中受離婚」のメカニズム

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「ボーエン理論」とは、家族をひとつの「情動システム」としてとらえ、個々の家族メンバーが相互に影響し合ってバランスを保っているとする考え方だ。

家族メンバーの一人ひとりは、「家族の一部であろうとする力」と「独立した自己であろうとする力」のバランスをそれぞれに保っているととらえる。独立した自己であろうとする力が勝っている状態を「分化度(自己分化度)が高い」と表現する。この分化度という概念が重要だ。

家族内のメンバーは、それぞれお互いに感情的に反発し合って交流している。複数の磁石がともに反発し合いながら微妙なバランスを保っているのをイメージしてほしい。そのなかで、分化度の高いひとは、理性が優位で、感情的になりにくい傾向がある。自己が確立し、ほかの家族メンバーの感情的交流に過敏に反応しない。

感情のバランスは、例えば子どもの成長、家族メンバーのケガや病気、死などで変化する。そのたびに家族メンバーは、まったくの無意識で、相互補完作用を働かせてバランスを調整し、家族システムを保とうとする。

分化度が低い家庭に育つと、家族を構成する部品としての凸凹がどちらか極端に出やすい。例えばやけに世話焼きだったり、逆に甘えん坊だったりする。それはつまりつねに寄りかかる対象を必要としているということであり、個が確立されていないともいえる。

中学受験クライシスは成長のチャンス

未分化のひとは、新しい家族を得ても、そのなかで共依存的関係を構築しようとする。異常に甘えるという形もあるだろうし、過干渉気味に接する形もあるだろう。いずれにせよ、相手も自分も独り立ちできないような感情癒着状態をつくろうとする。まったくの無意識で。

感情的に癒着した家族の情動システムが何か大きなショックによって揺らぐと、お互いの不安が増し、激しい感情的交流がなされるようになる。一時的にそれぞれの分化度が下がりやすい。中学受験はその大きなショックに十分なりうるイベントだ。

でもこれはチャンスでもある。家族のなか、特に夫婦間に葛藤が生じ、それに真正面から向き合えば、未分化の部分に本人が気づき改善できるからだ。分化が進む過程では、たいがい大きな精神的苦痛を伴う。いわば成長痛である。これが中学受験にまつわる夫婦の葛藤の正体であると考えられる。

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